第45話
望月くんのおしゃれ坊主(カラーで遊んだ短髪坊主)は、お客様たちにも衝撃を与えたようで…。
男性の顧客様は慣れた様子で話かけ「いいじゃん!これも新鮮だし」と褒めてくれるけど、女性のお客様の様子は賛否両論。
男らしくてかっこいい!ギャップ!とツボに入る方もいれば、衝撃が強すぎて、鳩が豆鉄砲くらった顔をする人も。
わたしもあんな風に驚いた顔をしていたんだろうなー…と、様子を眺めながら、新作を並べる準備をする。
袋を開けて新作を取り出して山を作っていると、接客を終えた菜子さんがお手伝いに来てくれた。
「衝撃だった?」
頭を強く振りながら、「はい!」と意思表示。
「びっくりするよね。最初見たとき、わたしと翔も、二度見三度見どころじゃなかったよ」
「そう、ですよね…」
「あの短さでも似合っちゃうのが、本物のイケメンだよね。おしゃれさんだから、髪型に合わせた服装を着こなせてるし」
確かに、短くなった頭に合わせたファッションもすごく似合ってて、見慣れてきたら、今の望月くんも普通にかっこいいと、受け止められた。
見た目が変わっても、中身は望月くんのままだから、売り上げに変化もないし、周りの人もすんなり受け入れている。
なにも変わることはない、ただ、インパクトが強いだけ。
イケメンの宿命かもしれないけど、見た目のイメチェンは、強く目を引く。
「今日、お話しするの、楽しみだね」
「…はい」
「全部、膿は出し切っておいで。一足先に、望月くんはすっきりしたみたいだし」
菜子さんの目線を追って、接客している望月くんに目を向ける。
本当に、ぎくしゃくする前の望月くんに戻ってる。
吹っ切れるなにかがあって、あの頭になったんだろう。
わたしも、望月くんとこのままでいたくなかった。
戻れるなら、前のような先輩後輩に戻りたいし、そのために、わたしが抱えている望月くんへの恋心を、打ち明けないと進めない。
はせくんにも、はっきりと、線引きするって言ったのに、行動できなかったから、傷つけ続けていたかも、しれない。
全部が丸く収まるように、わたしたちのごちゃごちゃした関係に、一度、終止符を打とう。
一度、終わりにしてから、新しい道を、作っていけばいい。
わたしも、望月くんも、はせくんも、完全に関係が壊れること、切れることはないと、心から思える。
集中しよう。
望月くんが指導してくれたから、今のわたしがあって、バイト先の居場所ができた。
菜子さんがいてくれる、久保田さんがいてくれる、バイトが楽しい、色んなことを学べてる。
大学を卒業するまで、時間はまだまだある。
ここで、たくさんの思い出と関係を、作っていこう。
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