恋が終わるまで⑨/試着室の秘め事 洸と亮の会話

第43話

洸はバカだと思う。


「だから、別れろっていっただろ…」


 廃人のように塞ぎ込む洸の隣に、俺も座り込む。


 洸は口を開く気配はない。


 なにも、口に出来ないんだろう。


 なにも考えられない、わからない、気持ちを遮断して、考えることをやめているような様子で…。


「心配してんだよ。…相談だって、してこい。もっと頼れよ」


 こうなる前に…、が、言えなかった。

 

 俺に遠慮していることも、一人で我慢してることも、気づけなかった俺が悪い。

 

 俺も、じぶんの気持ちに鈍感になっていて、洸の様子に目を向けることが、出来ていなかった。


 こうなった洸を見て、後悔しているのは、俺もだ。


「メンヘラ彼女は、大変ですなー」


「…俺が、そうしたから…」


 わざとふざけて言った彼女の悪口に、洸が反応する。


 本気でそう思ってんのかよ。


 だから、じぶんのこと、犠牲にするのか。


「お前のせいじゃないから。洸は充分、大事にしてる…、だから、その自信だけは、なくすなよ」


 どれだけ向き合って、大事にしてきたか、長い間、洸と優香を見て来た俺も、わかってるから。


 だから、これ以上お互いを傷付けたり、じぶんを傷付けるの、やめろよ。


「洸、負けんな」


ーーーーー頑張れ。

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