恋が終わるまで⑧/情けない姿

第36話

望月くんの教育係を卒業してから、望月くんとセットでシフトを組んでもらうことはなくなった。

 

 十分、望月くんには指導をしてもらえたので、細かい部分は菜子さん、久保田さん、はせくん。


 ちょっとオーラに気圧されて話しかけるのに勇気が必要だった店長たちとも、普通にお話しできたし、いざというとき頼ることができた。

 

 店長と副店長のビジュアルの良さにびびって、新人が話しかけられない、年の近い教育係を作ろう、という案だったのかもしれない。


 今月からはさらに、望月くんとシフトの時間が被ることが減っていて、シフトを組んでくれている久保田さんの配慮があるのかな…と、思ってる。


 実際に確認したわけじゃないけど、望月くんの様子はここ1か月で、見て取れるぐらい良くないな…と感じるもの。


 私と接触しない方が、お互いにとっていいかもしれないと感じていた。


 (なんで、こうなっちゃったのかな)と、思う気持ちは、正直ある。


 バイト先に恋愛を持ち込んだ末路がこれなら、仕方ないし、自業自得と思って受け入れるしかない。


「里帆、今日、俺の裾上げやってくれる?」

 

 レジで連絡ノートの確認をしていると、休憩から戻ってきたはせくんに声をかけられた。


 はせくんは今日、午前中から入っているから、私より先に退勤する。


「うん、いいよ。新しいジーンズ買うって言ってたもんね」


「痩せたみたいで、ウエスト下がってくんだよ」


 そういって自然の流れでお腹が見えるように、シャツとTシャツを同時にめくり上げる。


 痩せたとかいいながら見せるのは、しっかり割れた腹筋と、下のラインに続く綺麗な筋、ボクサーパンツの上部分。


「見せなくていいから…!」


「えー…目の保養になんだろ?」


 悪戯っぽく笑うはせくんに、「ならない」と言い切っても、顔が真っ赤な私じゃ説得力がないと思う。


 はせくんにはっきりと線引きした後から、今までの大人っぽいクールなはせくんだけじゃなく、こんな感じのおちゃめな姿も見せてくれるようになった。


 あの時は苦しかったけど、あれがあったから、友達として、バイト仲間として、もっと打ち解けることができたのかもしれない。


「洸がいないうちに、里帆にやってほしいんだよね。俺の裾上げも、練習になるし」


 今日は望月くんがいない日。


 はせくんは望月くんがいる日に、前のような積極的な絡み方もしてこない。


 今も極力、必要なことは久保田さんと菜子さんが教えて、はせくんが必要最低限しか絡んでこなくなった。


 私に気を遣ってくれてるのか、望月くんを気にしてなのか…。


 今の望月くんの様子に私が絡んでいるとは、思っていない…わけじゃない。


 けど、どこまで自惚れていいのか、どこまで介入していいのか、加減がわからなくて、私の言動は現状維持。

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