第34話
「洸…、どした?」
「在庫の確認で…」
動揺した洸の視線の先にいるのは、珍しい状態になっているはせの姿。
はせと三上さんが休憩に入るときの様子を見たときの洸は不機嫌丸出しだったけど、今は戻ってきたはせに敵視を向ける余裕はない。
わかりやすいぐらい動揺した洸に、なんて説明しようか、ここでも頭を抱えた俺は、はせが話し出す前に答えを見つけることが出来なかった。
「洸、しっかりしろ。…しっかりしろよ…!」
絞り出すように、怒りを必死に抑えるように…、だけど、感情だけはしっかり込めて、洸に気持ちをぶつけた。
はせの真剣な瞳が洸にまっすぐ向けられる。
はせの視線と言葉を受けとった洸は、自分が何を言われているのか、はせを怒らせているのか分かっていて、わかっているからこそ、はせの言葉と視線を直視することが出来いようで…。
情けない姿で、視線をそらした。
はせの想いから、視線をそらした…、洸の、負け。
「洸、先にフロア出てて」
はせの怒りが爆発する前に逃げるんだ…!という想いを込めて、洸に指示を出す。
洸も、これ以上、情けない姿を親友に見られるのは居たたまれないと思う。
必要な在庫を確認し、それらを持ってフロアに戻った。
「あいつのこと、めちゃくちゃ嫌いになりそうです…」
「洸も、はせも、三上さんも、今は時間が必要かもね。…最近の洸と三上さんのバランスも悪いから、教育係はここで一旦卒業させようかな。充分、仕事は覚えたと思うし。あとは俺とはせと菜子でそれぞれ、フォローしよう」
「…俺は里帆と時間あけなくていいんすか?」
「いいでしょ。はせと三上さんは、時間を空けたらややこしくなりそうだから」
「……」
なんも言えないって顔をしてから、はせは再び俯いた。
気持ちを落ち着ける時間は必要だよね。
俺は三上さんが戻ってきたときのフォローを菜子に頼んでくるか。
はせは自分で落ち着けることが出来るから、このままバックヤードに閉じ込めることにした。
どんな決着がつくかわからない、落ち着くかわからない三角関係だけど、辛抱強く、俺らも見守っていくから。
はせたちも、年相応に悩んで足搔きなさい。
こういう恋愛も、若いうちだから許される特権かもよ。
(俺らは20前半の社会人になってからやってたけどね)
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