第28話

「彼女のところに行ったよ。相手、一人暮らしだから、めちゃくちゃ抱いて宥めるんじゃないかな」


「……っそこまで聞いてないよ!!!」


 半泣きになった私の叫びも、ゲームセンターの大きなBGMに消えていく。


 やっぱり、最後は意地悪なはせくんだ!!!


「ライバルの肩ばっか持ってられねーだろ。早く俺を好きになれよー」


 笑いながら拗ねる私の頬を包むはせくんの手は、はせくんの心のように温かい。








 望月くん、彼女さんの存在を知っても、好きって気持ちを抑えることはできません。


 彼女さんのところに向かう望月くんの後ろ姿に、本当は泣きたくなりました。


 好きになっちゃだめって。


 傷つくし、辛くなるし、こんなに優しくしてくれるはせくんの気持ちに甘えて、最低な女になっていく自分が、苦しいです。


 なのに、なのに…、恋が終わりにできません。


 私も、2人の恋に参加させてください。


 ごめんなさい、私も、望月くんが好きなんです。


 彼女さん、私に望月くんを奪うチャンスを、くれませんか?

















 腕の中で泣く彼女に、なんて言葉をかえればいいかわからない。


 ここまで優香を不安定にさせたのは、俺だから…。


 俺が、俺が、…だから…。


 頭の片隅にずっと浮かんでいる、三上さんの姿に蓋をして、泣いている優香の口をキスで塞いだ。


 (三上さんを、好きになる資格が、俺には、ない。)

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