第23話

私と望月くんが靴とボールを持って戻ると、はせくんと翔さんと菜子さんでスマホ画面を覗いていた。


「あ、やっと来た!洸たち戻ってきたから、次は俺らが行くから。荷物見てて」


「あ、うん、行ってらっしゃい」


 はせくんの声に返事をして、席を立つ3人と入れ違いに座る。


 はせくんと菜子さん、翔さんの席にはそれぞれの飲み物が置いてあって、はせくんの隣には私の好きなイチゴミルク、洸くんの好きなアクエリアスが置いてあった。


「席がもう決まってるってことかな?」


「そうみたいだね」


 望月くんと決められた席に座り、荷物を降ろして、レンタルしてきたシューズに履き替える。


「望月くんはスコアいい感じ?」


「上手い方だと思うけど…、翔さんが化け物並に上手い。俺とはせで接戦かな」


 なんて会話があったのに…。





「やべー…菜子さんの一人勝ち…」


 ぐったりする男性陣と、圧巻すぎる現状に尊敬のまなざしを向ける私。


 久保田さんが教えると、めきめきと頭角を現した菜子さん。


 久保田さん、はせくん、望月くんを追い抜かして、圧倒的1位の結果となった。


「菜子さん…すごいです…!」


「私もびっくりだよ…!翔の教え方、すごすぎる!」


 教えた久保田さんに若干の後悔が見える気もするけど…、菜子さんの喜んでいる姿を可愛いな…と見守る雰囲気が出ていた。


「里帆ちゃんも翔に教えてもらう?すごく上達できるよ!」


「え、えっと…」


 菜子さんが久保田さんの彼女という前提で、翔さんは本当に、手取り足取り、他人にやったらセクハラに入るかもしれない細かいところまで指導してくれたわけで、それを私が受けるのは、セーフ?アウト?アウトだよねって感じで…。


 やや天然よりの菜子さんにどう答えようか私と久保田さんが迷っていると、声がすぐに飛んできた。


「却下」


 2人の声が同時に被って、言葉に威力が増す。


 びっくりして振り返れば、不機嫌オーラ?怒りのオーラ?をまとったはせくんと望月くんが、噛みつく勢いで久保田さんを見ていた。


 久保田さんは2人の様子に、両手を上げて降参ポーズをとる。


「待て待て、俺が言い出したわけじゃないし、やるって言ってないから」


「絶対だめです」


「わかった、わかったから」


 望月くんが本当に譲らない!と言った様子で久保田さんに念押しをして、この話は終わった。


 望月くんが怒ってる?様子を見せるのは珍しい。


 普段から穏やかというか、ほんわかというか、怒ることが滅多にない冷静さを感じていたから。


「もう1ゲームやる?」


「やろやろ!次で新記録出せるかも!」


 無邪気なやる気を見せる菜子さんの向こうに、彼氏の威厳を見せたいと闘志をもやす久保田さんが見えるような気がした。


 次のゲームの準備をしていると、望月くんが何かに気づいた反応を示す。

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