第16話

課題が終わって、みんなと解散した後に、閉まっていたスマホを取り出した。


グループLINEは、久保田さんが(説明するから、ちょっと待ってて)と送って終わってる。


はせくんから個人LINEが入ってて、拗ねたスタンプと「洸の八つ当たりが飛んで来た」とメッセージが入ってた。


久保田さんがどんな説明をしてくれたかわからないけど、今日の出勤ははせくん、望月くん、久保田さん、菜子さん紅一点だったから、収集つかずにわちゃわちゃなったのかな。


(お疲れまです)とありがとうございますの可愛いスタンプを送った。


バイト中だから、返事はすぐに来ないだろう…とカバンにしまい直そうと思ったら、着信が。


画面を確認すると、はせくんからだった。


「はい、もしもし。はせくん、休憩中?」


「そう、休憩中。…里帆は?外にいるの?」


「うん、ちょっと聞こえ悪い?大丈夫?」


「暗くなるの早いから、1人であんまり遅くまでうろつくなよ?」


「うん、ありがとう。すぐに帰るよ!友達とスタバで課題やってて…。あ、さっきのLINE、大丈夫だった?」


「自分のことを棚に上げて、俺の信用の無さを滾々と説教されたぐらい」


「……」


「翔さんみたいに送りオオカミにはなってませんって言ったら、翔さんにどつかれたよ」


「はせくん、学習しないの?」


全然傷ついてない様子のはせくんにほっとした。


「ボーリングの日も、俺が里帆を送って良い?バイク怖かったら、翔さんたちにお願いするけど」


「大丈夫。バイク乗ったの初めてだったけど、怖くなかったし、風が気持ちよかったよ」


「里帆に怖い想いさせるつもりないから、その日も安全運転頑張るわ。……げっ」


本当に不機嫌さがわかるはせくんの声が届いたと思ったら、次の瞬間、耳の鼓膜を刺激する声が響く。


「三上さん?」


「も、望月くん?」


「あんまりこいつ、信頼しないでね。いい奴だけど、女ったらしな部分が昔からあって…」


「洸ーー!お前、いい加減にしろよ!!!」


ブチギレるはせくんの声を最後に電話が切れたんだけど、切ったのは望月くんかな…。


さすがに、毎回女たらしの遊び人って言われたら、普段から冷静なはせくんでも怒るかも…。


最後に聞こえてきたはせくんの珍しく怒った声を思い出して思う。


はせくんとの電話は楽しかったけど、望月くんの声を聞いた途端に、全部を持っていかれる感覚があった。


恋って怖いなって、電話を切った今、ちょっと思ってる。


スマホの向こう側にいる望月くんに、今、全部の気持ちを持っていかれてた。


声を聞いたら会いたくなるし、名前を呼ばれたら嬉しくなる。


はせくんとの電話で焼きもちを焼いてくれたのかもしれない…。


そんな期待も出てくるし、はせくんが私を大事に想ってくれる気持ちを、今の私は踏みにじっていることも、自覚した。


「恋って…、怖い」


最低な自分の目の当たりにする、それが辛いなんて、今の私にいう資格はない。


恋をして、わたしはどんどん、最低な女になっていく。

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