恋が終わるまで④/無意識

第14話

はせくんは送りオオカミになることなく(送りオオカミの意味をよく分かってないけど)、わたしを家の近くまで届けてくれた。


先にバイクから降りて、わたしが降りるのを手伝ってくれると、「菜子さんに連絡入れといて」と一言残して帰っていく。


その後ろ姿を見届けてから、わたしはおうちに入って、菜子さんに「帰宅しました」とLINEを送って就寝。


菜子さんからすぐに連絡来るかなと思っていたけど、返信があったのはお昼を過ぎてからだった。


菜子さんの返信の焦りようがすごくて、すぐに返事をしなかったことをすごく謝られてしまう。


(全然大丈夫です!はせくんが信頼されてるってことで!)


送信。


今日、明日は私のシフトはなし。


明日と明後日ははせくんが休みで、望月くんは今日出勤で、明日は休み、明後日で私と被ることになっている。


毎回、望月くんのシフトと被っているか確認するかどうか迷っていたけど、好きって自覚して、はせくんともこんな感じで、確認しない選択はなくなった。


はせくんと被らないで済むのは気が楽に感じるけど(はせくん、ごめん!)、望月くんは指導係ということもあって、大学の講義やシフト希望の調整が無ければ、基本的には被るように店長が組んでくれている。


困ったときにすぐに聞ける年の近い先輩がいた方がいい、という配慮で、大学生のバイトが入ったときは、指導係を1人つけて一緒にシフトを組むらしい。


私が入ったときは、女性の先輩が菜子さん、店長しかいない時期で、もう少し早く入店してたら、就活でバイトを卒業した先輩に少しの間頼むこともできたって言っていた。


望月くんが人当たりもいいし、危険な部類に入らないから適任かなって選んでくれたのに、選んでもらった私の方が適任じゃなく、恋に堕ちてしまうという…。


私の店舗だけじゃないと思うけど、たまに応援で来てくれる他店の社員、バイトを見ても、レベルが高いイケメン、美女ばかり!


よく、私が合格できたなー…と思うぐらい。


身近で親しみを持ちやすい枠で入れてもらったんだろうな、と受け止めている。


「今日、明日は、心穏やかに過ごそう…」


講義の準備を始める周囲を眺めながら、言葉をこぼした。


考えたら辛くなる。


突きつけられた現実はとても痛い。


望月くんに彼女がいたことは、一夜明けた今でも傷としてしっかり残ってる。


望月くんのLINEのホーム画面を見にいったけど、彼女の様子はわからず。


2人がどれぐらい付き合って、どのぐらい仲がいいのかもわからない。


望月くんが彼女のことをどう思っているのかも、踏み込んで聞いたら傷つくってわかっているから、想像だけで留めてる。


あの望月くんが好きになった人だもん、すごく可愛いに決まってる、勝ち目なんてない。


わかっているのに、諦めることが頭に浮かばない私は、とっくに重症だ。

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