第11話

「言ったでしょ。俺は同じ立場だったから、はせの肩を持ちたくなるって。」


「がっつり持ちすぎな気もするんだけど…」


菜子さんが私の気持ちを汲み取って言葉にしてくれたけど、久保田さんの嫉妬に火をつけた。


「菜子は洸の立場を応援したいだけじゃねーの。そういえば、洸、ちょっと大和に似てるもんな」


「似、似てないよ…!!」


菜子さんは久保田さんに怒ってぽかぽか反撃するけど、久保田さんは屁でもないって顔してる。


「はせくん、”大和さん”に会ったことある?」


「あるよ。俺が入った頃、まだ店舗にいたから」


「望月くんに似てる?」


「なに?里帆も気になんの?」


久保田さんがはせくんの肩を持ちたくなるのって、”似てる”部分があるのも理由かな?


「そういう気にするじゃないけど…」


「似てはいないよ。いわれてみれば、雰囲気や系統はそっち系かもしれないけど。望月くんって感じじゃないから、里帆の候補に追加すんのやめてね。これ以上ライバル増えるのは勘弁」


「候補に入れないよ!そんな、恐れ多い発言もできないし…!」


もう好意を隠すことをしないのか、はせくんがド直球に飛ばしてくる。


元々隠していたわけじゃないのかも、しれない。


私が鈍感だっただけで、わかりやすいように飛ばしてくれてるのかもしれないけど、これはこれで、刺激が強くて逃げ出したい。


「俺も飲み物買ってくる。俺が戻ってくるまで、里帆のこと帰さないで。泣いた理由を里帆の口から聞きたいから」


「りょーかいです」


久保田さんが手を上げて答えると、はせくんが安心した表情で飲み物を買いに店舗に向かった。


「三上さん、もうはせに決めたら?」


「久保田さん、…完全にはせくんの味方ですか?」


「だって、洸は彼女いるんだよ?彼女いるのに、はせにやきもち焼いてー…。可愛がってる後輩で洸の人柄を知らなかったら「クズ!」の一言で終わることだから」


「確かに…というか、本当にはせくんに焼きもち焼いてるかもわからないし、憶測で話を進めて、関係がこじれることが一番怖くて…」


頭を抱える私に、菜子さんが優しく肩を叩いて「大丈夫だよ」と声をかけてくれる。


「一度に色んな情報が入って混乱するよね。本人に確認したことじゃないこともあるし、私たちの憶測から耳に入れちゃったこともあるし」


「……」


「恋なんて頭で考えるものじゃないから、感情の整理をしながら、選択していこう。私たちは、里帆ちゃんがどっちを選んだとしても、応援するから。ね、翔もね!」


「もちろん。一番大事なのは、三上さんの気持ちだよ。三上さんも、俺らにとって可愛い部下に変わりはないからね」


じーん…と、菜子さんと久保田さんの言葉に感動。


これで今日の話は終わりだと締めの気持ちになっていたのに、どかっと座って存在アピールをする、俺様はせ様。


「で、洸に泣かされた理由は?」


逃がさないと目が本気なはせくんに、「望月くんに彼女がいることを知って泣きました」と白状した。

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