第10話
「どーいうことですか⁉」
居たたまれない顔をしている菜子さんを問い詰めることができず、久保田さんに飛びかかるように問いかけた。
久保田さんはあっけらかんとした顔で、話しを続ける。
「今のはせと三上さんと洸の構図が、昔の俺、菜子、もう1人の社員ってっこと」
「え…もう1人の社員って…」
構図の前に新しく出てきた社員のワードに、思わず頭が反応した。
「副店長の、鈴木さん?」
「違うよ!!違う違う!!」
違うところに飛びしてしまったみたいで、菜子さんが慌てて訂正した。
「鈴木さんじゃない人、違う店舗に異動になったから、里帆ちゃんは面識ないんだけど…」
「ちなみに、颯汰さんは優子さんに恋してるから」
「へ!?え!?」
「翔はなんで色々ばらしちゃうの!!」
焦った菜子さんが口を塞ごうとするけど、もう遅い。
出た言葉はしっかり耳に届いてる。
「副店長が店長に、片想いしてるって、こと?」
久保田さんが肯定するかのように、返事をした。
「うちの職場、三角関係になるパターン多いみたいだねー」
「…私たちは他人事のように言えない立場でしょ…」
「バイト先に恋愛持ち込んで恥ずかしい…ってちょっと思ってたけど、ほっとしました」
思わず笑ってしまったけど、菜子さんは余計に居心地が悪そうに縮こまる。
「というわけで、俺は略奪に成功。正確には、今の里帆ちゃんのようにあいつに片想いしてるのを振り向かせたんだけど…」
ほうほう…と、久保田さんと菜子さんのなれそめを聞きながらスタバを飲んでいると、久保田さんから真剣な目を向けられる。
「苦しいことも、しんどいことも、俺は十分に、知ってるから」
そう言われて、はっとした。
久保田さんが、はせくんの肩を持ちたいと言った気持ちも、理由も。
私が望月くんを好きなように、はせくんも私のことを好きなら、同じように、苦しい想いを続けるということも。
「…でも、本人が本当に、私に好意があるって言ったわけではないから」
私から出来ることはない…と、言葉を続ける前に、背後に誰かの気配を感じて、振り返る前に声が飛んで来た。
「好きだよ。」
「え、え?えーー!!!??」
驚きながら振り返ると、息を切らしたはせくんが立っていた。
そのまま私の首の腕を回して「自惚れだって思えないぐらい好きだって何度も言ってやろうか?」と耳元でささやく。
「だだだ大丈夫です!!離して…!とりあえず!ち、ちかい!!」
いきなりの至近距離と告白に耐えれる心臓は持ち合わせていません!
わたしの抗議を聞き入れてくれたはせくんは、私の隣の席にどかっと腰掛ける。
テーブルの上に置かれたヘルメットを見て、「はせくん、バイクできたの?」と思わず声が出た。
「そうだよ。翔さんから連絡来て、急いできたんだよ」
あちーっといいながら、もう季節は冬に近いのに、上着のチャックを開けるはせくん。
元気だなー…とその様子を見ながら、はせくんの返事に疑問を持った。
「久保田さん、はせくんに連絡したんですか?いつ?」
「菜子が三上さん捕まえてすぐ。洸が三上さん泣かせたよーって」
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