第6話

「どっちから交換する?望月くんは?交換した?」


「まだ、ですね。菜子さんがちょうど来たんで」


「じゃあ、私から先に交換しようかな。すぐ戻らないと、翔が飛んできそうだし」


はせくんと店長が退勤したので、今はフロアに翔さんだけが残った状態。


夜の時間帯になっているけど、菜子さんがいないとやることが多い翔さんが大変だと思う。


菜子さんが準備してくれたQRコードを読み込んで、お友達追加をする。


追加した菜子さんにメッセージを飛ばして、交換完了。


「次は望月くんと里帆ちゃんの番だね」


「はい」


わたしと望月くんがスマホをかざし合って、同じように友達追加した。


「なにか交換するきっかけでも出来たの?」


「3人でボーリングに行こうって話になって…」


「え!本当!?私も行きたい!翔も誘って行こ!」


「え!いいんですか!?行きたいです…!!!」


「三上さん、俺らと行く話してたときより、前のめりな気がするんだけど…」


「細かいことを気にしないの、教育係!あとで私と翔を含めたグループLINE作っておいてね。では、戻ります」


菜子さんが戻った後のバックヤードは1度ぐらい、空気が冷えた気がする。


(いるだけで温かい存在だなー…)と実感しながら、望月くんと向かいの席に座った。


「俺の方でグループ作って招待する形でいい?」


「うん、お願いします」


「グループ名どうする?」


「俺様と森のお友達、とか?」


「はせがふんずり返るグループLINEになったら嫌だから、却下」


「確かに」


すぐに飛んできたグループLINEの招待。


グループ名は、5人の名前が並んで書かれてた。


「はせくんって、下の名前が”亮”くん?」


「そう、はせがわ りょう」


「亮くんなんだ…」


「はせって呼ばれることが多いから、あんまり下の名前聞かないよな」


「うん、バイト中も、はせって呼ばれることがほとんどだもんね」


「名前呼びするのは、はせの彼女ぐらいかなー…」


「はせくん、彼女いるの?」


ほんの小さな好奇心で、深い意味はなかった…といえば、嘘になるかも。


普段から、からかうような感じで顔を近づけたり、思わせぶり?ではないけど、誤解を招くような態度をとるから、彼女の存在があるなら、心配だった。


誤解をさせたくない。


そう思ったから、答えを待っていたけど、望月くんの顏は、真剣にわたしを見るだけ。


「…気になる?はせに彼女がいるか」


「え、あ、うん、…聞いていいことなら…、でも、本人に聞くのが礼儀だよね」


「いないよ」


答えないと思った望月くんが、すんなり答えを言った。


「あ、そうなんだ」


「今はいない。遊びの女はいるかもしれないから、三上さん、”気をつけてね”」


優しい口調だったけど、望月くんの声は”男はオオカミなんだよ”と思わせる、普段と違うものに感じた。


「は、はい」

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