恋が終わるまで②/真実

第5話

望月くんの教え方は間違ってなかった!けど、私の畳み方を確認してくれて、「ここが苦手で形が崩れるかも」と指摘してくれた。


部分を直したら、もっと畳みやすくなって、スムーズに畳み終えることができたし、望月くんはその間も接客に向かうことができた。


前半部分のお仕事が落ち着いて、私と望月くんで休憩に入ることに。


はせくんは私たちが休憩に入る前に退勤。


望月くんから裾上げのやり方を教わったら、はせくんの裾上げをやらせてもらうことで今回の話はまとまる。


翔さんが板挟みになった感じで、心配だったけど、その状況を楽しんでいる?感じもあって、何も言わずに見守ることにした。


「忘れる前に、LINEの交換しようか」


「うん」


立ち仕事にまだ慣れていないから、バックヤードに来ると、椅子に座る癖がついていた。


無意識に椅子の背もたれに手を伸ばしていたのを誤魔化すように、リュックの中のスマホを探す。


スマホを見つけて、望月くんとLINEのQRコードを読み込む動作をしているときに、バックヤードの扉が開いて光が入り込む。


バックヤードは倉庫の役目も担ているから、中が広い。


休憩するスペースだけ明かりをつけているから、入り口付近や、ハンガーラック、在庫を置いている個所は暗いまま。


扉が開いたことで、店舗の光がバックヤードの入り口付近に入ってきた。


光に慣れる前に、聞きなれた声が耳に届く。


「あれ?里帆ちゃんたち、LINEの交換するの?」


入ってきたのは菜子さん。


菜子さんもレディースエリアで新作の品出しと接客と同時進行でやっっていて、片付いた段ボールをバックヤードにしまいに来た様子。


細い腕の間に段ボールを抱えて、私たちのいるテーブル付近まで来てくれる。


「わたしも里帆ちゃんとLINEの交換したい!」


「ぜひぜひ!交換したいです!」


菜子さんからの嬉しい申し出に、すぐにお返事する。


「先に段ボール片づけてくるね!」


「菜子さんともLINEの交換してなかったんだ?」


「うん、バイトの人とはまだ交換したことないよ」


(なんで?)と思った疑問は、その後すぐに零した望月くんの言葉で消えた。


「俺らだけに、壁作ってんのかと思ってた…」


「そんなことないよ。望月くんとはせくんが、その…ほら…」


「イケメンだから緊張しちゃうところもあるよね」


段ボールを片づけて戻ってきた菜子さんが、私の言い淀んだ言葉を代弁する。


「そ、そのとおりです…」


自分でも顔が赤面しているのが分かった。


「三上さんから見ても、俺らってイケメン?」


はせくんがわたしにいつもするような、高身長を折り曲げて顔を覗き込む動作に、思わず心臓と体が跳ねる。


「い、いけめんだよ…!」


「あーあ、望月くんって天然たらしの罪な男だね」


悪戯が成功した子供のような笑顔を見せる望月くんに、菜子さんがぴしゃっと言葉を投げる。


「はせがよくやってるんで」


「はせくんはいいの、はせくんは」


菜子さんが「はせくんはいいの」といった理由が、このときの私にはわからなかった。


この言葉の意味を理解したとき、あんなに泣くとも知らずに…。

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