第3話

はせくんは、時々天然なのかな?本気で言ってるのかな?とわからないような行動をする。


はせくんも、望月くんに並ぶちょーイケメン。


望月くんは、わんこのような甘い柔らかさをもった正統派イケメンで、はせくんは、意地悪な仕草や発言もさまになるクールなイケメン。


はせくんがじっと見つめてくると、好きじゃなくても「どきっ」として顔が赤くなるような、色気と強さをもっていた。


「三上さん、おはよう」


望月くんの声が耳に届く。


はせくんを見ていたわたしの視線は望月くんに戻された。


寝起きとは思えない、いつも通りの爽やかさ満点の甘い笑顔。


さすがです、望月くん…。


本当に鼻血が出ることはないとわかっているけど、思わず両手で鼻を抑えてしまうのは仕方ない。


はせくんの冷たい目線を無視して、望月くんのきゅーんとする笑顔をかみしめた。


わたしは望月くんと対面するたび、好きなんだ、恋してるんだと実感する。


「望月くん、おはよう。寝れた?寝不足だったんだね」


「ん、寝れた。はせが就業前に起こしてくれるって約束してたから、安心して爆睡したんだけど…」


「俺が起こす前にちゃんと起きるよ。洸はくそ真面目だから」


望月くんがはせくんに視線を送ると、つーんとクールに言い放った。


バイト中も仲の良さが伝わってくる。


「はせくんと望月くんって仲良しだよね?バイトで仲良くなったの?」


はせくんと望月くんは系統違いのイケメンで、2人でフロアに立つと目立つ。


二大イケメン!なんてお客様が興奮するぐらい、認知度の高い店員で、社員さんからも2人の仲の良さはお墨付き。


売り上げに貢献してくれるから、と土日は2人がセットでシフトに入ることも多かった。



「ここまで仲良くなったのは、バイトで被ってからかな?」


「大学が同じで、顔見知りではあったよね」


「え!そうなんだ!」


はせくんに続く望月くんの発言で、2人が同じ大学ということを初めて知った。


2人とも同い年だけど、バイトでは大先輩。


後輩の立場のわたしからぐいぐいプライベートなことを聞いていいのかな?と思うところがあったから、2人のプライベートに関することは聞かないようにしていた。


「バイト始めて仲良くなって、今では大学でもほとんど一緒、プラべでも一緒、バイトでも一緒って感じの…、俺ら付き合ってんの?」


「真面目な顔して聞かないで」


はせくんのぶっこんだ質問に、望月くんはたじたじになりながら答えてた。


はせくんが真面目にいうと、冗談なのか本気なのかわからないときがあるなー…。


他人ごとのように見ていたら、はせくんの矢がわたしに飛んできた。


「里帆は俺らについて聞いてこないもんな。それってわざと?」


射貫くように飛んできたはせくんの視線。


思わずそらしたくなるぐらい、強い視線に感じるのはなんでだろう…。


耐え切れずに顔を横に向けると、顔を近づけて「逃がさない」と獲物を狙うような目で見てくる。


た、耐えきれない!!!


「はせ、近い」


ぐいっと、音がしそうなぐらいの勢いで、望月くんがはせくんの首根っこを掴んでわたしから引き離した。


「三上さん、戸惑っているから。はせの距離感はときどきバグっておかしいよ」


「バグってないし。里帆だから近くにいってんの」


「それは公然のセクハラ宣言ってことかな?」


「仲良くなりたいってことです」


望月くんの圧が強かったのか、はせくんが片言な敬語で答えてた。


「仲良くなりたいんだけど、里帆が壁つくってる感じがしたんだよね。同じ年だしさ、バイトでは先輩後輩あるかもしれないけど、気兼ねなく話してよ」


「…うん、ありがとう。はせくんがそういってくれて、すごく嬉しい。肩の力、抜けた感じする」


座り直したはせくんと望月くんを見て、心の内に思っていたことを、打ち明ける勇気が出た。


「あまり…、詮索されたくないかな…って…」


2人とも目を奪うほどのイケメンで、近づきたくて遠目で2人を見る女の子たちも、正直いる。


わたしはまだ聞かれたことはないけど、2人について聞かれている先輩を目にしたことも、ある。


2人は、そういう状況下にいて、入ったばかりの新人の同級生を、警戒する気持ちがあるかなって、勝手に思って、距離を置くようにしていた。


「里帆ならいいよ。全然。なんなら、もっと俺に興味をもってほしいぐらい」


はせくんの声に、うつむき気味だった顔を上げると、「…洸よりも」。


はせくんの口が小さく、そう動いたように見えた。


「俺も、三上さんと仲良くなりたいと思ってるから」


望月くんの笑顔が、とても眩しかった。


二度目の鼻血の心配が必要です…!


「はせ以外の同級生ができたの嬉しいし」


「俺じゃ満足できないってこと?」


「癖が強すぎるんだよ…、はせは」


「ここの職場、年が近い人が多いし、里帆も含めた皆で遊びに行きたいな」


「またボーリングとか行く?」


「ボーリング?」


「はせと俺と翔さんたちで、バイト終わりにボーリング行ったりしてたんだ。あとは、近くのスタバで飲んでから帰ったり」


「里帆も行こうよ、ボーリング」


「え…、行きたい…!」


「決まり。また後で色々決めていこうぜ」


話していたら、バイトが始まる時間が近づいていた。


はせくんの休憩もちょうど終わりみたいで、3人で一緒にバックヤードの扉に向かう。


先に扉を開けた望月くんが、通れるように扉を開けたまま待っててくれる。


「ありがと望月くん」


「どういたしまして」


通り過ぎるとき、ふわっと、望月くんの匂いが鼻をかすめた。


望月くんの優しいふんわりした感じとは違う、男らしさを感じさせるクールな香り。


思わず見上げてしまった望月くんは、下から見ると、普段とは違う雰囲気をした顔をしてた。


こ、これは本当に、沼る…。


甘いだけじゃない、クールなギャップをもった望月くんに、また恋に堕ちる。


(望月くん、そうやって無意識に女の子を虜にするって、分かってますか?)

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