第31話
望月くんを心配して、わたしの様子を見に来てくれたのかな…。
「最低なことしちゃったって言ってて…。洸、普段は善人なんですけど、身内に対しては口が悪いというか、態度が悪くなるというか…、卑劣になるので…!」
一生懸命、望月くんのフォローをしようと説明を頑張ってくれる彼女さんは、後ろに黒い笑顔の望月くんが来ていることに、気づいていないと、思う。
望月くん、身内に対して卑劣になるんだ…と、裏の顏を彼女さん越しに見てしまった気分と…。
望月くんとわたしのことを、”疑わないでいてくれる”、”じぶんが見た、目の前のことで判断してくれる”素敵な彼女だと感じる気持ちが、同時に湧いてくる。
「大丈夫です。望月くんが落ち込むような、ひどいことはされていないので。わたしも言い返しちゃったし…」
申し訳なさそうに笑いかけると、彼女さんも、差し出がましいことを…と、同じような笑みを浮かべた。
「珍しく落ち込んでいたので、はせくんと三上さん、3人でいるのが楽しいんだなって。器用に見えて不器用だから、仲直りできたか心配で…」
安堵した彼女さんを眺めていると、後ろに到着した望月くんが、彼女のおでこに腕を回して引き寄せた。
「わ…っ!」
体制を崩した彼女さんは、咄嗟の判断で、望月くんに捕まったことが分かった様子。
高身長の望月くん的に、掴める一番低い場所がおでこだったのかな。
「なにやってんのかな?」
笑顔だけど…黒い、確かに、身内にしか見せない顔だ…。
「し、心配で…。洸、外面いいけど、気を許した人には不器用だから…!」
にっこり笑った望月くんは、「ごめん、休憩もらっていいみたいだから、行ってきてもいいかな?」と私に向き直る。
「あ、うん、大丈夫。いってらっしゃい」
「あ、ありがとう三上さん!またね!またお話しようね!」
可愛い小動物のような愛らしさを残した彼女さんは、望月くんに捕獲されるようにバックヤードへ消えていき、場面を見ていただろう久保田さんが代わるようにやってきた。
「洸の本性、見た?」
「見た…気が、します」
「大人に見えて、三上さんと同い年だからね。まだまだ子供な部分があるし、意外と裏の顏というか、不器用なところがあるんですよ」
「な、なるほど…」
「優香ちゃんがその分、大人でね。洸の1個上なんだけど、精神的にはもっと大人に感じるぐらい。ふわっとしてるんだけど、しっかりしてるんだよー」
久保田さんの説明を聞きながら、目の当たりにしたふんわりした雰囲気と、可愛い見た目、抜群のスタイル、そして、望月くんの1個上だという驚き。
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