第25話

「里帆が好きになった洸は、顔だけじゃないってことだよな」


 わたしの反応に笑ったのか、望月くんへの気持ちから出た優しい笑顔なのか。


 さっきとは違う、幼さを含んだ可愛い笑顔を見せたはせくんが、至近距離まで来ていた顔を離した。


「洸に好きって言われて、揺るがなかった?」


「…はせくん、ドSですか?」


「どっちかっていうと、今の質問的にはドMだろ」


 楽しそうにけらけら笑う様子を見て、ドMなんて言葉は皆無でしょ、と思うのだけど…。


「…揺るがなかった、かも。幻滅が先に来ちゃって…。わたし、望月くんの表面上しか見てなかったのかな…」


 (はせくんの言う通り、面食いだっただけかも…。)


 じぶんの厚かましさが恥ずかしくなり、両手で顔を隠して縮こまる。


「好きだから、彼女がいることが許せないって独占欲が働いたとかじゃねーの?」


「……」


 はせくんの視点は、いつもわたしと違って、他の考えを生み出してくれる。


「恋愛の答えなんて、すぐにわかんないものだから。もう少し、色んな視点から考えてみたら?」


「……そう、かも?」


「俺も里帆も、洸も、先急ぎすぎたんだよ。子供だったから、気持ちのまま、暴走して。もう少し、時間をかけて考えたら、今と違う選択や答えが見えてくるかもしれないし」

 

 はせくんの言葉が、すとん、すとん、と、心に落ちていく。


「時間をかけて選択した上で、里帆に、俺を選んでほしいと思ってるよ」


 ーーーーすとん。


 最後に落ちたものが、心に大きく根を張る気がした。


「里帆、お昼食べた?」


「…まだ」


「じゃあ、今日は食べに行こうぜ」


「え!」


「まだ時間あるし。この時間なら、時間帯がずれてて込んでないし」


 わたしの返事を聞くより先に、立ち上がり、お財布をデニムのポッケに入れこむ。


「う、うん!行こう!」


 はせくんと話して、もやもやはすっきり飛んでった。


 せっかくだから、気持ちをもっと、あげていきたい。


 はせくんの提案は、わたしを温かい陽だまりに連れていってくれるような気持ちに、してくれたよ。


(ありがとう)


 まだまだ、向き合うための時間が、わたしたちには、必要だよね。

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