第24話

「里帆としては、洸のだらしない部分を、見たくなかったと思う。俺だって、里帆を好きなら、ちゃんとしてくれって思ったし…」


「……」


「だけど、俺が、洸から時間を奪ったのかなって。急かせて、こんな風にしてしまったのかなって、思う部分が、あるから」


 そういって目線を下げるはせくんの表情に、きゅっと胸が、締め付けられる。


「好きな女に、彼女がいるって言いたくなくて。けじめをつけるには、時間が足りなくて。離れていこうとするのを、食い止めたくて…」


 はせくんが紡ぐ言葉を、否定したり、遮ったりせず、取りこぼさないよう、真剣に耳を傾ける。


「焦って、ああいう行動をとるのは、わかる気がする。洸が、傷ついていないとは、思えないから…」


「……親友、だもんね。はせくんと望月くん…」


 はせくんは、望月くんと付き合いが、長い。

 

 わたしは、わたし目線でしが、望月くんのことを見ていなくて。


 あのときの、望月くんの気持ちを、望月くん視点から、考えてあげることが、できなかった。


 誠意だったかも、しれない。

 

 彼女と別れたら…って言ってくれたのは、それほど真剣に、わたしへの想いを持ってくれていたんだと。


「…じぶん勝手だったかも、しれない」


 話しだしたわたしに、はせくんがゆっくり視線を向ける。


「望月くんの気持ち、考えなかったし。向き合いたいと言っておきながら、一方的にわたしがけじめをつけようとしたし…」


「恋愛なんて、自分勝手になるもんでしょ。俺だって、自分勝手に、里帆の気持ち考えず、洸を遠ざけようとしたじゃん」


 そういって真っすぐ、いつだって、目をそらさずに、はせくんは気持ちを伝えてくれる。


「恋愛って、ほんと、複雑だよな」


「…うん」


 笑って、この場の雰囲気を明るくしようとするはせくんの優しさに、乗っかるように、わたしも笑顔を見せた。

 

 笑った顔を見て、はせくんがほっとしたのが伝わる。

 

 向けられたのは、優しい笑みと、優しい目だった。


 まるで「愛してるよ」って言われてるような…、温かい目線。


「里帆が俺のことを好きになれば、簡単な話だったんだけどな」


 おどけるはせくんのストレートな言葉に、ぼっと顔が熱くなる。


「すすストレートすぎるよ!!!」


「やっぱり洸はイケメンだよなー。里帆も面食いだったかー」


 肘をついて、意地悪ように顔を覗き込んでくるはせくんに、わたしの温度は急上昇。


「だだだだ…って!」


「俺だって、洸に負けず劣らずのイケメンだと思うけど?」


 イケメンだってこと、自覚してますよね?って反撃したくなるぐらい、整ったきれいな顔を惜しみなく見せてくるはせくんは、やっぱり意地悪だ。

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