第21話
先に歩き出した望月くんに、続いて、わたしも足を進める。
歩き出してから、どんどんと心臓がバクバクし出して…。
スタバで話をして、わたし、普通に帰宅、できるのかな。
望月くんと向きあって、座って、お話なんて、できるかな。
(自信…ない…っ)
「ごめん!望月くん…!」
出した声が、じぶんの予想以上に、切羽詰まった声だった。
望月くんが振り向いて、心配そうに私を見つめる。
「どうした…?、大丈夫?」
「あの、ね…、帰りながら、話す感じでも、大丈夫かな…」
怖くて、望月くんの顔が、見えない。
おかしい…。
ずっと、ずっと、好きだった人なのに…。
一緒にいるのが、苦しくなる。
「うん、大丈夫だよ。駅まで歩きながら、話そうか」
望月くんは、いきなり態度を変えたわたしに、イヤな態度をとらない。
変わらず、優しく接してくれる。
わたしの様子を見ながら、距離をとって、駅に向かって、歩き出す。
望月くんが空けてくれる距離は、わたしの声が届く範囲で。
話がしたいわたしの気持ちも、汲み取ってくれていた。
「……望月くん」
「うん」
優しい声で、返ってくる。
「彼女、いるの?」
「……うん」
わたしはその優しさに、甘えることも、浸かることも、できず。
本題を突きつけて、望月くんを、突き放した。
「…そっか」
望月くんの返答を受け止めて、わたしはこれ以上、言葉が出てこない。
望月くんはペースを変えることなく、作ってくれた距離感を守って、駅まで歩いてくれる。
わたしは黙って、その後に続いていく。
なにも会話のない沈黙で、わたしは気まずさよりも、(そうなんだ…)と、腑に落ちる感覚を味わった。
もう、ショックじゃない。
望月くんから、はっきり答えを聞いて、満足しているわたしがいる。
これでいい、これが聞けたから、納得できたから、と。
わたしだけ一方的にすっきりして、望月くんの気持ちを聞かないままでいたなんて、気にすることもなく。
長いのに、そんなに長く感じなかった道のりで、わたしと望月くんは向き合った。
駅の明かりが、望月くんの顔を照らしていく。
「望月くん、話してくれて、ありがとう」
「……うん」
「いきなり、態度を変えてごめんね」
「そんなことないよ」
笑ってくれる望月くんに、懺悔するように、最後の気持ちを口にした。
「……望月くんが好きだった。大好きだったよ」
「……」
「わたしは、望月くんに好意を持っていたから、…これからは、線引きしてください」
お願いするように、頭を下げた。
顔を上げて、望月くんを見ると、傷ついた表情をしている。
わたしは、それに触れる資格は、ない。
「望月くん、また明日」
駅の改札に向かおうと、望月くんに背を向けた瞬間。
「-----えっ」
----グイっ
掴まれた腕が引き寄せられて、体制を崩すように、倒れ込むと…。
望月くんの、腕の中にいた。
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