第16話

イケメンの顔が強面になって台無し…!


「どういうことですか?」


「イケメンは誘い方も上手だね。返事も聞かずに決まっちゃった感じ」


「俺も明日、出勤します」


「だめ。はせくん連勤しすぎだから、ストップ。休んで」


「……っ」


「今日、作戦会議するから。退勤でしょ?しっかり休んでね?」


「…はい。お疲れ様でした。お先に失礼します」


 菜子さんの圧にやられて、はせくんは静かに引き下がった。


「はせくん、素直でいい子だよね。いつも礼儀正しいし」


 はせくんの背中を見ながら、菜子さんが言葉をこぼす。


 はせくんは、きちんと菜子さんに頭を下げて、挨拶した。


 わたしのときは、なにも言わず、頭を撫でるだけだったのに…。


「里帆ちゃんには、うまく言葉が出なかったんだよ。里帆ちゃんは悪くないけど、当たる先が帰っちゃったから。里帆ちゃんに出しちゃうの、怖かったと思うし」


 少ない情報化でも、菜子さんはこんなに多くのことを分析できる。


 はせくんのことも、わたしより”何倍も理解している”。


 ーーーーちくっ


 胸の奥の奥で、痛いと泣く音が、聞こえた気がした。







 


 バイト終わり、一緒に来ようとする久保田さんを「女子会の邪魔だから」と菜子さんが追いやり。


 2人でいきつけのスタバにやってきた。


 飲みものを買って、いつものようにテラス先へ。


 座り込むと、どっと仕事の疲れもやってくる。


「意外と、体力仕事だよねー…」


「ですね…」


 いつもテキパキと完璧な姿ばかりを目にする菜子さん。


 こうやって一緒になって「疲れたー…」といってくれる姿に、親近感が湧く。


「にしても、急に動いたね。三角関係」


「これって…三角関係なのでしょうか…?」


 望月くんに”彼女がいない”と思っていた、一昨日までのじぶんなら、すごく喜んだ展開だったけど…。

 

 彼女がいることを知った今の状態は、胃をきりきり締め付けられるような苦しさを、感じる。


「三角関係だと思うよ。昨日のはせくんの様子も、望月くんが、菜子さんに好意があるってわかってる前提だったし」


 買ってきたドリンクを飲みながら、菜子さんが分析していく。


「わたしたちが見てないバックヤードで何かあったから、望月くんが行動に出たと思うんだけど…」


 なにがあったの?と、菜子さんの瞳が、優しく聞いてくれる。


 わたしは口を開いて、ゆっくりと、言葉を選びながら、あった出来事を話していった。

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