傷つく覚悟を決めて①/はじまり。番外編/久保田さんのお説教。

第10話

菜子さんが里帆を連れて、先に歩き出してしまったので…。


 菜子さんの前では優しい仮面を被っているけど、俺らの前では長身でしっかり者。


 怒ると怖い、尊敬する大先輩に戻ってしまう翔さんと、対峙することに…。


「亮」


「…はい」


「ガツガツいくのは、良くないね」


「…はい」


 傍から見たら、180㎝越えの俺らが向かい合って、一人は腕組んで説教スタイル、俺は下向いて反省してますポーズをとる、異様な光景。


「三上さんの気持ちを考える余裕も、ときには大事だと思うよ?」


「…その通り、です」


 洸と彼女のキスシーンで、だいぶダメージ喰らっただろうし…。


 それもあって、里帆のこと傷つけた洸に、意図的じゃなかったとしても、怒りの矛先が向くわけで。


 あんな風にのらりくらり、思わせぶりな様子を目にしてきて、そんな態度、これ以上許したくなかったし。


 故意じゃなくても、里帆に触ってくる洸を牽制したかった。


 結局は、じぶんの焼きもちや独占欲を、堂々と満たす言い訳と手段が、ほしかっただけなのかもしれない。


「…頭、冷えました。反省してます」


「うん、亮ならわかってくれると思ったから。俺らも…、とくに俺は、亮側の気持ちがすごくわかるし。亮の肩を存分に、持つつもりでいるよ」


「…翔さん、」


「だからこそ、俺の助言はしっかり聞くように。洸に、勝てるようにね」


 そういって笑う翔さんは、優しい顔をしていたけど、恋を勝ち取った男の顏にも見えた。


 勝利したもんね、翔さんは。


 見ていた俺も、かっこいいと思うほど、翔さんが菜子さんを想う気持ちは、……。

 

 俺も、余裕なくしてないで、しっかりしないとな。


「里帆を諦めたくないんで、…頑張ります」


 まだ、始まったばかりだから。

 

 

 



―――――本当の意味で、俺らの三角関係は。

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