第7話

はせくんに連れられてお店に戻ると、心配そうに待っていた久保田さんの顏が、ぽかーーーんと。


 効果音が聞こえそうなほど、見事な(ぽかーーーん)を披露。


 動けないわたしと久保田さんをその場に残して、はせくんはバックヤード向かう。


 わたしたちの荷物を全部もってきて、「とりあえず、店出ましょう」と、誘導してくれた。


 はせくんのアシストで、わたしは連れられるように、並んで退勤する。


 再び従業員出入口を出ると、そのままはせくんと久保田さんに連れられ、近くのスタバに行くことに。


 歩いていける距離にあるスタバは、バイトの終わりにみんなで行くことも、あった。


 一瞬、望月くんが彼女といるかな?って、不安になって、はせくんを眺めたけど…。


 はせくんの様子から、その心配はいらないかなって、なんとなく悟る。


 お店に着くと、望月くんと彼女の様子はなかった。


 はせくんは久保田さんと少し話をすると、わたしを連れてテラス移動し、座らせた。


 「ちょっと待ってて」

 

 そういうと、久保田さんに「お願いします」と声をかけて、レジの方へ。


 久保田さんは、優しい笑顔を向けながら、「もう少ししたら、菜子も来るから。みんなで話してから、帰ろうか」と口にした。


 菜子さんは、社員さんで、久保田さんの恋人。


 さっき電話してたのは、ここで合流する予定だったからかな。


 泣きつかれたこともあって、少しぼーっとしながら、外を眺める。


 久保田さんが、無理に話す雰囲気を作らずにいてくれたから、今の気持ちに委ねて、のんびりできた。


 「お待たせ。久保田さん、ありがとうございます」


 「全然いいよ。はせこそ、ありがとう」


 そういった2人のやりとりをしっかり見たら、スタバの飲み物が4つ。


 支払いは、久保田さんがしてくれたようだった。


「…っ久保田さん、あの…!」


 お金…という前に、優しいけどそれ以上は言わせてくれない笑顔で封じられてしまった。


 ちょうどそのタイミングで、菜子さんの声も聞こえて…。


「ありがとうございます」


 素直に受け入れお礼を伝えると、久保田さんは嬉しそうに頷いた。


「適当に買ってきたので、好きなのどうぞ」


 はせくんが人数分買ってきてくれた飲み物を、「里帆ちゃんから先に!!」という圧をくくり抜けて、最後に選ばせてもらった。


 本当に、この場に連れてきてもらっただけで、充分です。


 あのまま帰宅してたら、泣いて泣いて、どうしようもなかった気がする。


 なにも知らない状態で合流した菜子さんは、わたしの顔を見たあと、はせくんに声をかける。


「はせくん、これはどういうことかしら?」


「菜子さん、泣かせたのは、俺じゃないんで…」


 圧をかけてくるの、やめてくれますか…と、はせくんの弱々しい声が続く。

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