第4話

休憩からあがると、宣言通り、2人で仕上げてくれてた。


 その上、閉店時間が近づく中でも、丁寧に接客をして、売り上げに繋げている。


 2人の姿は本当に、頼もしかった。


 わたしが出てきたことを目線で確認したはせくんと望月くんが、接客の邪魔をしないような合図で知らせてくれる。


 2人が気付いてくれたので、わたしは簡単な締め作業から入ることにした。


 はせくんはそのまま休憩に入らず、30分早い帰宅になるかも。


 休憩に入れそうな感じじゃないなー…と、よく働く2人の姿を勉強しながら、整頓作業、掃除に取り組んだ。


 はせくんは休憩に入る余裕ないかと思ったけど、望月くんが予定が入ってしまい、30分早く退勤するらしい。


 休憩から上がった2人の間で出た話らしく、はせくんは無理矢理休憩をとり、望月くんは入れ替わるように退勤となった。


「慌ただしいね」


「俺がわがまま言っちゃって…。翔さんとはせで協力してくれたんだ。三上さんも、ごめんね」


「全然大丈夫だよ。望月くんの普段の頑張りがあるからだよ」


「ありがとう」


 そうやって笑う望月くんは、最初に恋に堕ちたように、言葉で上手く表現できないぐらい目を奪う。


 望月くんの笑顔は、特別。


 この感情を正確に表現できる言葉があるなら、総動員して書き出したい。


 それが出来ないぐらい、望月くんの笑顔の破壊力がすごい。


 わたしの陳腐な言葉のボキャブラリーでは、足りなすぎる。


 みんなが望月くんを好きなのは、内側から出る魅力や雰囲気も、あると思う。


 望月くんは天使で、はせくんは悪魔、の表現が、いちばん近いかな…。


「洸、上がっていいよー」


 バックヤードから若干、眠そうな様子を見せたはせくんが出てきた。


 (あ、本当に悪魔っぽい)と思うぐらい、目つきが悪くなってる。


「眠い?」


「ちょっとね、短い時間で仮眠とったのが悪かったかなー…余計に眠いわ」


「無理言ってごめん」


 はせくんの様子を心配して、望月くんが声をかける。


「全然よゆー。…待たせてんだろ?早くいってやれよ」


「…うん、ありがとう」


 男同士の会話なのか、小声で話す望月くんとはせくんの声は、しっかり届いてくれない。


 2人で通じるものがあるのかなー…なんて、呑気なことを想っていた。


 本当に、このときのわたしは、一日通してのんきすぎたかも、しれない。


「三上さん、先にあがるね。ありがとう!あとよろしくね、がんばって」


「うん!ありがとう!頑張るね」


 望月くんの優しい言葉にしっかり応えて、バックヤードに向かう望月くんを見送った。


「里帆がほとんどやってくれたから、あとは翔さんの細かい作業だけだな」


「ほんと!?よかった!締め作業、慣れてきたかな?」


「洸の教育係も卒業なるし、締め作業のときは、俺か洸のどちらかしかいないように、なるかもな」


「…それもそれで、寂しいね」


「…里帆は、洸だろ」

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