15

卵焼きくれるのかな?




「じゃ、じゃあもらおっかな!」




話題を早く変えたかった私が答えると、手越君は箸で卵焼きを一つつまんだ。




「はい、アーンして?」



「え?」



「アーン」




ニコッと微笑みながら、手越君は私のあごをクイッと持ち上げた。



驚いた私の開いた口に卵焼きを入れてくれた手越君。



お姫様抱っこ、壁ドン……の次は、あごクイですかっ!



全身の毛穴から汗が吹き出すような感覚になり、私は口をもぐもぐさせながら、再びうつむく。



こういう事を恥ずかしげもなくサラッとできてしまうのが手越君というキャラなのかな……。



ってか、卵焼きすっごい美味しいんだけど!




「お、美味しい……!」



「でしょ?この卵焼きを超える味にはまだ出会った事ないんだ。オレのママンが作った卵焼きがナンバーワンさ」




……オレのママン?



えっ、今の聞き間違いだよね……?



だって、手越君が『ママン』なんて言うワケないし。



とりあえず、卵焼きが美味しいのは間違いないけどさ。




「あ、ごちそうさまでした。本当、美味しかった!」



「それ、ママンが聞いたら喜ぶから、伝えとくね」




……全身がゾワッとしたよ、ゾワッと!



やっぱり聞き間違いじゃなかったよっ!



手越君がママンって……!



いやいや、まさかね。



『ママン』ってフランス語だから、手越君はフランスと日本のハーフなのかもしれないし。




「手越君って、ハーフなんだよね?」



「うん、そう。アメリカと日本のハーフ。親父が日本人でママンがアメリカ人」




全く関係なかった……。



まさかの……マザコンキャラですか?!

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