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おそらく、この様子だと学園祭が終着地点だろう。



学園祭までどのくらいの日数が残っているのかわからないけれど、コツコツと親密度を上げていくしかない!



難易度高かろうと、手越君が苦手だろうと、他に女の子がわんさかいようと、尻込みしていたら何も始まらないもん。




「美奈、情報ありがとう!」



「もちろんだよ!意中の相手と頑張ってね!」




親指と人差し指を合わせてオッケーマークを作って、ウィンクする美奈。



美奈みたいに、いつも笑顔でニコニコとしていれば幸せだって寄ってくるよね?



よーし、頑張るぞ!



グッとこぶしを作って、心を決めたとたん目の前の風景が変わった。




「ハニー、今日は一緒にランチしないかい?」



「えっ?」




声をかけられて顔を上げると、手越君がお弁当を手にしていた。



朝からお昼にワープした……?



貴重な時間が飛ばされるなんてっ!




「うん、いいよ……」




それなら、お弁当を一緒に食べるというイベントははずせない。



2人きりって気まずいような気がするけど、手越君の事だからきっと話は尽きないだろう。



ここでもニコッと笑って言ってみた。




「やったね!じゃあ、屋上に行こうか!」



「うん」




私の答えに子どものような反応を見せる手越君。



チャラ男なのに可愛さも兼ねてるとか、反則。



無邪気な笑顔に少しドキドキしてしまう。



手越君と並んで屋上への階段を上がる。



リアルじゃ屋上は施錠されていて、出られない。



このシチュエーションはかなり憧れのものだった。




「夏は暑すぎて無理だけど、この時期はあったかくてピッタリだよ」




屋上へのドアを開けながら、手越君は説明してくれた。

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