3

せ、切ない……。



さっき失恋したばかりで、胸がキューッと痛くなる。



もちろん九条君は、そんな風に私が思っているなんて知らない。



相変わらずの麗しい顔で自分の席に着いた。



鏡を取り出して、髪の毛の乱れを直しているけれど、私がプレゼントした女優ミラーではない。



しかも、髪を直してすぐに鏡をポケットにしまった。



教室だし、授業中じゃないからさすがにマジマジとは見ないのかな……?




「おはよう、ハニー。九条の事を見つめないで、オレの事をハニーの瞳に映してほしいな」



「あっ!お、おはよう……」




そ、そうだった。



ここは九条君ルートじゃなかった。



振り返ると、そこには外ハネ金髪の手越君がいて、手をヒラヒラさせている。



朝から、鳥肌立つようなセリフをよく恥ずかしげもなく……。



攻略の順番、テンション的に間違えたかも。



あの物静かな九条君の後に、正反対のおしゃべり手越君を選択するんじゃなかったなぁ。



でもやっぱり私は生理的に手越君がちょっとムリだし……。




「あ、そうだ。昨日、駅前に新しいカフェがオープンしたんだけど、つぼみちゃん一緒に行かない?」



「へっ?!」




攻略ルート早々、デートのお誘いですか?!



さすが、チャラ男キャラ手越君。




「あ、う、うん。行ってみようかな」



「マジで?!つぼみちゃんがオッケーくれるなんて思わなかったよ。じゃ、放課後一緒に行こう!」




嬉しそうに笑う手越君に私は小さくうなずく。



本当は断ろうかなって思ったんだけど、攻略期間は短いし、ここで断ったら親密度が上がるチャンスを逃す事になる。



3度目の正直、じゃないけれどさすがに手越君はハッピーエンドで終わりにしたい!

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