2

「……なさい!つぼみ、起きなさい!」




遠くから声が聞こえてくるような感じ。



またこの始まり方かぁ。



思わずため息が出てしまう。




「いい加減に起きないと、学校に遅刻するわよ!」



「起きてますよ、大丈夫です」




姿を見せないお母さんに返事をする。



さすがに3回目ともなると、このパターンは少し飽きる。



って言っても、どこの乙女ゲームでも朝のこの始まり方は王道だもんね。



大きく伸びをして、カレンダーを見た。



今日は、10月17日。



秋といえば、学園祭とか体育祭が学校行事であるのかな。



その行事を手越君とこなしていくのかぁ。



あんまり想像できないなー。



というのも、手越君は女の子なら来る者拒まず、去る者追わずという主義。



だから、特定の女の子を作らないで、その日の気分で彼女を決めているみたいな……。



ゲーム上では話を進めていくうちに、ヒロインへの想いに気づいて、最後はヒロインだけを……ってなったんだけどさ。



ゲームでは攻略期間がまるまる3年間だったから、親密度を上げるのには難しくなかった。



でも、ここだと3ヶ月……どころか、すでにもう10月の半分が終わっている。



1ヶ月半で上手くいくとは思えないんだよね……。



九条君の攻略だってもう少し期間が長ければさぁ、いけたんじゃないかって思うんだよ。



終わった事だけど、引きずるよ私は。



ため息をついて顔を上げた時、すでに目の前の風景は変わっていた。



もちろん制服はしっかり着用している。




「おはよう、滝沢さん」



「お、おはよう……」




教室の出入り口に立っていた私は、ちょうど入って来た九条君に挨拶をされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る