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「……なさい!つぼみ、起きなさい!」
遠くから声が聞こえてくるような感じ。
またこの始まり方かぁ。
思わずため息が出てしまう。
「いい加減に起きないと、学校に遅刻するわよ!」
「起きてますよ、大丈夫です」
姿を見せないお母さんに返事をする。
さすがに3回目ともなると、このパターンは少し飽きる。
って言っても、どこの乙女ゲームでも朝のこの始まり方は王道だもんね。
大きく伸びをして、カレンダーを見た。
今日は、10月17日。
秋といえば、学園祭とか体育祭が学校行事であるのかな。
その行事を手越君とこなしていくのかぁ。
あんまり想像できないなー。
というのも、手越君は女の子なら来る者拒まず、去る者追わずという主義。
だから、特定の女の子を作らないで、その日の気分で彼女を決めているみたいな……。
ゲーム上では話を進めていくうちに、ヒロインへの想いに気づいて、最後はヒロインだけを……ってなったんだけどさ。
ゲームでは攻略期間がまるまる3年間だったから、親密度を上げるのには難しくなかった。
でも、ここだと3ヶ月……どころか、すでにもう10月の半分が終わっている。
1ヶ月半で上手くいくとは思えないんだよね……。
九条君の攻略だってもう少し期間が長ければさぁ、いけたんじゃないかって思うんだよ。
終わった事だけど、引きずるよ私は。
ため息をついて顔を上げた時、すでに目の前の風景は変わっていた。
もちろん制服はしっかり着用している。
「おはよう、滝沢さん」
「お、おはよう……」
教室の出入り口に立っていた私は、ちょうど入って来た九条君に挨拶をされた。
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