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この笑顔、こんなに胸がキュンッとくるのに、何て残念な話の流れなんだろう。



思わずため息をつくと、九条君は私の肩を抱いて、窓際の席に座らせてくれた。



……え、な、何?



さりげない彼の行動に、何事かとドキドキしてしまう。




「ただでさえ、幸薄そうな顔をしているのに、ため息なんてついたらもったいないよ。ほら、この席で自分の顔を鏡で見てごらん」




幸薄そうな顔で悪かったわね!



……でも、九条君のように麗しい顔の人に言われたら仕方ないし。



九条君が差し出して来た鏡に自分が映る。



差し込んでくる日の光で、キラキラと私の顔が輝いて見えた。




「輝いて見えるでしょ?この席は僕のとっておきの席なんだけどさ。滝沢さんもこの席に座りに来なよ。自分に自信が持てるようになって、常に輝いていられるようになるから」




ここに座っていた理由は、あたたかかったからじゃなくて、鏡の中の自分が日の光でキラキラと輝いていたからだったのね……。



顔を上げると九条君と目が合った。



彼は小さくうなずいて、フッと笑う。



……自分に自信を持てって事なのかな?



うん、もちろんそんな事は絶対にないんだろうけど!



でも、もしかしたらこれがきっかけで、九条君の攻略ができるかもしれない。



この関係は決して無駄じゃないと思う。



ここから少しずつ、九条君との時間を増やしていって距離を詰める!



しかも、もうすぐクリスマスっていう設定だし、さっきのイルミネーション好きっていう情報も生かして、何か頑張れるかも!




「ありがとう。私も輝いていられるようになるかな?」



「僕の足元にも及ばないけどね」




……間髪入れずに言わないでくれるかな。

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