15

「滝沢さん……」



「は、はい……っ!」




形のいい、ピンクの唇が動いて私の名を呼んだ。



ナルシストだろうと、美形は美形。



瞳はキラキラしているし、二重でパッチリしているし。



整った顔立ちで色白の肌。



自分大好き人間だってわかっていても、こんな風に見つめられたら、やっぱり嬉しいよーっ!




「何で気づかなかったんだろう……」



「えっ?」




九条君は立ち上がって、私の正面に来ると、トンと私の顔の横の壁に手をついた。



か、壁ドンですかーっ!



気づかなかったって何が?



もしかして、実は私が可愛いって今まで気づかなくて、今気づいたっていう乙女ゲームにありがちなパターン?



いいよいいよ!



王道でも何でも、ナルシストキャラでも九条君なら受け入れるよ!



顔がかなり熱い。



もしかしたら、真っ赤かもしれない。



ドキドキしながら、九条君の言葉を待つ私。




「一番近くにいたのに、どうして気づかなかったのかな。……白雪姫に出てくる鏡のような存在のキミに」



「はい!……えっ?」




期待して返事をしたけれど、すぐに聞き返してしまった。



鏡のような存在のキミ?



それって……。




「滝沢さんは僕のこんな姿を見ても、何とも思わないみたいだからさ。……教えてよ。この世界で一番美しいのは誰?」




耳元で囁かれて、心臓がギュッとつかまれたような感覚に陥る。



傍から見れば、美味しい構図なのに、会話はめちゃくちゃ。




「く、九条君……デス」



「当然だよね」




壁から手を離して、九条君はフッと微笑んだ。

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