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「欲しいものかー。一つだけあるよ」



「え、なになに?!」




九条君でも欲しいものがあるんだ?



その答えに私は、ドキドキしながら待つ。




「……白雪姫に出てくる鏡かな」



「……はっ?!」




白雪姫に出てくる……鏡?!



そういえば今朝、鏡を覗きこんで何か言ってたっけ。




「白雪姫に出てくる鏡……?」



「うん。滝沢さん、知らない?白雪姫に出てくる鏡の事」



「いや、知ってるよ?この世で一番美しい人は誰?って聞けば答えてくれる鏡でしょ?」



「そう。それが欲しいんだよね……」




ウットリとした顔の九条君。



キラキラしたものじゃないし。



しかも、絶対に手に入らないものだし!



何よ、『白雪姫に出てくる鏡』って。



そんなに、自分の美しさを認めてもらいたいっていうわけ?




「……そんなものもらってどうするの?鏡が答えなくても、九条君は十分美しいよ?」



「そんな事はわかってる。でも、こんな事は人に聞ける事じゃないんだろ?」



「……まあ、そうだよね」




しかも学校一の人気者である九条君が他の人に『僕って美しい?』なんて言ったら、おかしい目で見られるよね。



納得するようにウンウンうなずいていると、強烈な視線を横から感じた。



不思議に思ってそちらを見ると、九条君がなぜか私を真剣な目で見つめている。



さっきまで、鏡の中の自分を見つめていたと思ったら、何でそんな目で私を……?



愛情が下がったんじゃないかと思いながらも、そんな風に見られたら途端に体温が急上昇。



心臓の鼓動も速くなり、緊張して手に汗までかいてきた。

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