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参考書を見ているのかとばかり思っていたけれど、九条君が真剣に見つめていたのは、鏡!
さっき生徒会室で見た鏡ではなく、薄っぺらくて参考書に上手く挟まりそうなほどの鏡だった。
授業中にも鏡を覗きこんで、自分の顔にウットリしているとか……。
こんな九条君、嫌なんだけどっ!
あれ?しかも、『何で、キミは鏡の向こう側にしかいないんだ?』って言ってたよね?
それって、鏡の中の自分に問いかけてたっていう事?
……まさかとは思うけど、さっき私に教えてくれた答えって、自分自身に語り掛けていたわけじゃないよね。
『私はあなたを愛しています』って……!
お願い、九条君ー!
自分を愛するんじゃなくて、私を見てーっ!
「……フッ」
消しゴムを握りしめながら自分の席に座ると、九条君は鏡の中の自分に向かって微笑みかけた。
笑顔の確認なのか、自分に向かって微笑みかけているのか。
どちらにしても、私には絶対に向けてくれる事はない笑顔である。
その時、チャイムが鳴って授業が終わった。
場面が変わっても、風景は変わらない。
イベントが続くっていう証拠なんだろうけど。
しかし九条君ルートはまだ初日なのに、すでに見込みのない恋のような気がしてテンションが上がらない。
今までナルシストキャラを攻略した事はあっても、ゲームの主役となるようなパーフェクトキャラがナルシスト設定というのはなかったと思う。
九条君がナルシスト設定で、攻略をするってかなり難しくない?
そもそも、親密度すら上がる気がしないんだけど!
「……ここは、折原美奈ちゃん召喚してみようかな」
どうやったら親密度が上がるのか、美奈ちゃんを呼んでみる事にしよう。
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