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ため息をついた瞬間、目の前の風景が変わり始めた。



九条君攻略の始まりのイベントがコレって、かなりきついんだけど。



次に風景が切り替わった時、私は教室の自分の席に座っていた。



隣の席はもちろん九条君。



たった今、生徒会室で見た姿はどこにもない。



彼が今見つめているのは、鏡ではなく参考書。



容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。



何でもこなす彼の本来の姿……なんだけども。



ここでまさかのバグ設定発生とは!



馬渕君のみのバグかと思ったけど、九条君にも問題アリだったし。



……いや、まだ始まったばかりだし。



それに、裏の顔がナルシストだったっていうキャラも今までに攻略した事があるし!



九条君の攻略なら山あり谷ありだっていう事は重々承知している。




「はあ……」



「それじゃ、次の問題を、滝沢!」



「……え、は、はい?!」




盛大なため息をついた時、突然指名されて私は慌てて立ち上がる。



まさかワープした先が授業中だったとはっ!



完全に油断していたし。



しかも今が何の授業か全くわからない。



九条君を観察している場合じゃなかったわっ!




「え、えっと……」




黒板に書かれているのは古文の内容。



チョークで先生が指している文章はどういう意味かって事なんだろうけど……。



全くわからない……。




「……私はあなたを愛しています」




どうしようかオロオロしていた時、ボソッと隣から声が聞こえて来た。



そちらを見ると、九条君は何事もなかったように参考書に目を落としたまま。

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