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カ、カッコよすぎる……!



一枚の絵のような目の前の光景。



ドラマのワンシーンでも見ているような感じだ。



……いけないいけない。



見惚れている場合じゃなかった。




「く、九条君……」




書類袋を抱えて、私は生徒会室へと足を踏み入れた。



だけど九条君は私が入った事には気が付かないみたいで、窓の外を見つめている。




「はあ……」




近くに寄れば、九条君のため息まで聞こえて来た。



美男子がため息をついても絵になる。



横顔が憂いに沈んだような表情で、何か困った事でも起きたのかなと心配になってしまう。



何でも完璧にこなすような人でも、悩みごとの一つや二つあるよね……。



……って、えっ?



正面に回った私は、目の前の光景に驚いて思わず書類袋を落としてしまった。




「はあ……。この世で一番美しいものは何かって鏡に聞いたら、僕の顔だと答えてくれるかな」




書類袋を落とした音にも気が付かないくらい、九条君は自分の世界に入り込んでいる。



窓の外を見ながら、考え事をしているのかと思いきや、彼は鏡に映りこんだ自分の顔を見つめながらため息をついていたのだ。



しかも自分の顔に落胆してため息をついているのではなく、美しすぎて困る……というニュアンスのため息。



パーフェクトキャラが、まさかのナルシスト……?!




「……ん、滝沢さん?」



「あ、く、九条君……っ」




私にようやく気が付いた九条君。



この姿を見られても、彼は特に慌てる様子もなかった。



マイペースにゆっくりと鏡をしまいながら、しゃがみこんで書類袋を拾い上げた。

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