14

俗に言う、お姫様抱っこの状態。



そのまま馬渕君は走って保健室に向かってくれた。



サッカー部なのに、砲丸投げにアツい変な馬渕君だとばかり思っていたけれど、しっかり胸キュンエピソードがあるなんて。



ゲームバランスどうなってるのか、意味不明……。




「先生いねーし、とりあえず横になっとけ」




保健室について、馬渕君は私をベッドの上におろしてくれた。




「あ、ありがと……」



「いや、俺が気が付かなかったからごめんな」




申し訳なさそうに謝る馬渕君。



さっきまであったアツさがどこかへ行ってしまっている。



こんな一面もあるんだ……。




「今度から、スポーツドリンクを大量に準備しておく。滝沢が砲丸投げに集中できるように」




……いやいや、気にするところはそこじゃないでしょ。



ちょっとだけ見直したのに、前言撤回。



アツい人はどこまでもアツいし、変わり者はどこまでいっても変わり者。



これは期待するだけムダかもしれない。




「滝沢、俺はこんな事になってから気が付いた。お前がどんなに大切なのかという事を」



「……へっ?」




素で変な声が出た。



まさかの告白モード突入?!



いや、ウソでしょ?!



だって明らかにこの状況はおかしいでしょ。



馬渕君を見れば、頬を赤らめて私から視線をそらした。



……これはマジだ。



けどそれならそれで、いいや。



だって、これで馬渕君の攻略は終わりのはずだし。



むしろ私からの告白イベントじゃなくて良かったよ。




「俺は滝沢の事が好きだ。付き合って欲しい……!」




馬渕君は決心したように、私をまっすぐに見つめて、ハッキリとそう言い放った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る