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「じゃあ次は、滝沢の番だ」
「え?!わ、私もやるの?!」
砲丸を差し出されて私は慌てて聞き返す。
「もちろん」
「や、無理だよ!私、砲丸投げなんてやった事ないし……」
やってみたいとも思わないんだけど!
「何言ってんだよ。何事も熱くならなければ始まらないだろ?!いいか?熱くなれないやつは、冷凍庫に入れて忘れたままになっている冷凍ミカンと一緒だ!」
「……意味不明」
熱く語る馬渕君の言葉に、私はハハッと乾いた笑い声をあげた。
決して面白かったわけじゃない。
笑うしかなかったんだ。
「とにかく、何事もチャレンジするのが大事だ!やってみろ!」
「は、はい……」
砲丸を手渡されたけれど、やっぱり重いものは重い。
砲丸投げなんて、やった事ないんだけど……。
「とーう!」
とりあえず、声をあげれば遠くに飛ぶかなって思ったけど、声すら出なかった。
かなりマヌケな声。
しかも遠くには飛ばず、50センチほど飛んだだけで、ドスッと落ちる。
……やっぱり飛ばないよね。
だって、やった事ないもん!
テレビで見た事あるけど、ボールを投げるみたいに投げるんじゃないんだよ?
あごの辺に挟んで、片手で押し出すように投げるんだよ?
……飛ぶわけないじゃない。
「情熱が足りてないなー」
「いや、でも熱くなるだけなら、何も砲丸投げじゃなくても……」
「人がやっているのを全力で熱くなっても仕方ないと思って。うち陸上部ねーし、砲丸投げなら学校の誰もやってねーからいっか……みたいな?」
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