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そっちを見れば、馬渕君の姿。



さっきの事がなければ、本当に爽やかでカッコいいんだけど。




「おはよう、ハニー。今日も可愛いね」




馬渕君を見ていたら、背後から歯の浮くようなセリフが飛んできた。



振り返ったその先にいたのは、金髪に色素の薄い茶色の瞳で、色白のイケメン君。



目が合うと、彼は片目をつぶって、ウィンクする。



ハーフって噂もあるとかないとか……って、いう設定の手越 晃輝(てごし こうき)君だ。



馬渕君を選択したのは失敗だったかなぁ。



手越君も見た目はカッコいいんだよね。



ただし、『黙っていれば』なんだけど。



こんな風に、私の席はイケメンで周りを固められた状態。



恋愛ゲームにはありがちな配置かなと思う。



でも、スマホを通して見て来た設定より、自分が実際に経験するとなると、緊張感がハンパない。



せっかく、イケメンで周りを固められたおいしい状態なのに、何もしないで俯いて地味に過ごしていたら、もったいない。



逆ハーレムを味わいながら、全員とそれぞれハッピーエンドを迎える!



今は、夢の中だか、ゲームの世界だかわからないけど、とにかく積極的にいかないとね。



何て、サイコーな世界なんだろう……!って思えるように。



とりあえず、選択した馬渕君をさっさと攻略してしまおう。



変にアツいし、ゲームの馬渕君とは全然違うけど。




「……あれ?」




今気づいたけれど、私の前の席には誰の姿もない。



ゲームの中だと、ここに親友役の女の子が座っているはずなのに。



何かと色々ズレてるから、親友ちゃんも違うところにいるのかも。



首をかしげているとカバンから電子音が聞こえて来た。

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