9

「……なさい!つぼみ、起きなさい!」




遠くから声が聞こえてくるような感じ。



ああ、もしかして、これってお母さんが起きない私を起こしに来た?



眠くて眠くてたまらないから、まだ寝ていたいんだけどなぁ。




「いい加減に起きないと、学校に遅刻するわよ!」



「……ふわ~い」




やれやれ、仕方ないなぁ。



さすがに遅刻はしたくないし。



あくびをしながら、目をこすって起き上がった私。



それにしても、何か変な夢を見ちゃったなぁ……。




「って、……え、ココどこ?!」




部屋の中を見回してびっくりした。



目を覚まして起き上がった場所は、いつもの私の部屋じゃない。



私の部屋ではないけれど、何となく見覚えのある部屋だった。



イチゴ柄のカーテン、イチゴ柄のタンス。



イチゴ柄のランプ、イチゴ柄のベッド。



赤やイチゴを主とした部屋の家具は、全て私が恋愛ゲームのアプリ内で設定した自分の部屋。



という事は、ここって、もしかして……ゲームの中?!




「いやいや、ウソでしょ!そんなバカな事があっていいわけないじゃない!」




まさか自分がゲームの中に取り込まれちゃった……なんて言って、誰が信じてくれると思う?



メガネをずりあげようとして、顔に触れたけれど、メガネがない。



そういえば、やけに視界もハッキリしているような……?




「って、キャー!前髪短いし、メガネがないー!」




イチゴの形をした鏡を覗きこんで自分の姿を見て驚いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る