10
そうだった……。
ゲームの自分の顔は、前髪がちゃんと切られていて、メガネをしていない設定なんだ。
メガネをしなくてもハッキリと見えている。
何だか、世界がすごくキレイに見えているような……。
「って、感動している場合じゃないし!」
イチゴの形をした時計を見ると、すでに8時を過ぎている。
早く支度をしないと間に合わない!
クローゼットを開けると、制服が……。
「って、ええええ!何この制服!やっぱる本当にゲームの中なの?!」
見覚えのある制服は、いつもスマホで見ていたゲームの中の高校の制服。
赤のチェックのスカートにキャメル色のブレザー。
赤いネクタイ……。
「って、これ冬服だし!夏服はこっちだっ!」
夏服は赤チェックの夏用のスカートに半袖のポロシャツ。
紺のベストだ。
一体何がどうしてこうなったのか……。
考えても何も始まらない。
私は制服に着替えて、出かけようと部屋のドアを開けた。
……え、でも、学校までの道のりなんて知らないんだけど!
ゲームじゃ、学校に行くって選択したら、勝手にワープしたみたいに省略されるしさ……。
「ええっ?!ワープした?!」
外へ出ようとドアを開けたとたん、すでにローファーを履いていて、学校の門の前に立っていたのだ。
ゲームの中だから、途中省略された感じ?
さっきまでイチゴで埋め尽くされていた部屋にいたはずなのに。
真夏の太陽の強い日差しが、ジリジリと私を容赦なく照らす。
「本当、どうなってんの……?」
「危ない!」
校門を通り抜けたところで、男の子の声と共に砲丸が物凄い勢いでこっちに向かって飛んできた。
って、ええええええええええ?!
砲丸って、何でええええええっ?!
ドスッと私の足元に砲丸が落ちた。
ちょっとでもズレていたら、私は死んでいた……。
ひえええええええええっ!
アプリでは、このシーンってサッカーボールが飛んできたはずなのに!
「だ、大丈夫だったか?!」
大丈夫なわけないでしょっ!
下手すりゃ死んでたわよーっ!
私の事を殺す気?!
そう思いながら顔を上げると、駆け寄ってきたのは、背が高くてガッチリとした体つきの男の子。
ドキッ……。
心配そうな顔で私を見下ろす彼に、心臓が反応する。
「ウソ……」
短髪で端整な顔立ちの彼は、馬渕 翔太郎(まぶち しょうたろう)だった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます