第2話 下校と女の子
終業後、少し教室に残ってはみたが何も起こらなかった。大半の生徒はすぐに教室からいなくなってしまったし残った生徒も数人のグループに集まって他を気にもしない。やはりクラス分け直後にグループに入れなかった僕に今更友達作りはハードルが高い。ヘッドフォンをつけていつもの帰り道を辿る。
再開発が進んで雑多さが無くなったと大人達が嘆く通りはコンクリと緑が意図的に混在させられていて独特の雰囲気を作っている。それでも街に溢れるフェンスや仕切り柵はこれからも変容していく街の意思を表しているようで少し落ち着かない。まるで過去と未来の隙間から何かが染み出してくるようでーーー
「君、見えているね?」
ヘッドフォンを貫通してきた声に振り向けばそこには女の子がいた。僕と同じ学校の制服。外ハネボブ。腕組みして壁にもたれる姿勢がキマり過ぎていて漫画みたいだった。今のは僕に言ったのか?
「フッフッフ。そうだ君だよ。君は……」
わざとらしく笑い、わざとらしく腕組みを解いて。漫画みたいな女の子は漫画みたいに転んだ。
「てッ」
そりゃ痛かろう。僕には友達がいないし、まして女の子の知り合いはいないけれど。転んだ人を見て声をかけるくらいは出来る。はずだ。よし。
「来ないで!」
なぜ?
「やり直しさせて!」
何を?そう思う暇もあらばこそ。女の子は立ち上がって腕組みし、壁にもたれかかった。そして。
「君、見えているね?」
うん。すっ転んだ君の無様がしっかりと。後、腕に砂がついているのも。
沈黙。女の子が視線を自分が転んだアスファルトと僕の間を何度か彷徨わせ。その表情とあまりに意味不明な状況に僕は混乱して。
居た堪れなくなって逃げ出した。
「あ!まって!」
待たない。待てない。そんな勇気は僕には無い。
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