第10話

振り返り、宴会場の方に耳を澄ます。

すると、あれほど騒がしかった部屋からは物音一つせずに、不気味な静けさだけが漂っていた。


『え……空耳だった?』


しかし、先ほど凹んだ襖はちゃんと証拠を残している。


『まさか、皆、同時に寝た? 旅館側から注意されて?』


――それとも、皆殺しに遭った?


考えただけでもゾクっと背筋が凍ったが、どうしても、その宴会の間を開ける勇気は湧かなかった。逃げるようにトイレへ駆け込み、用を足した。

トイレには橋本先輩はもういなかったようだった。

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