scene 5: Which is now, nightmare or reality.

「……まあ、行こうぜ‼そしてなるべく早く戻ろうぜ‼」

今の雰囲気を弾き飛ばすかのように吹雪は明るく言った。

「……ああ。そうだな。うっし、じゃあ行こう!」

ウィーン シュポッ ピピピピ……

そして、左側のグラブバッグを認証させた。

「よっしゃ開いた。」

「じゃあ行くとするかー」

声が出なかった。

当然だ。

目の前の一瞬の光景があまりにも非現実的過ぎたからだ。

ドアの先は縦に長い通路になっており、先はブロックで塞がれていた。

奥の左右にドアがあり、

その左の部屋から青く長い手がうねりを伴いながらドアの中に入っていったからだ。

「……嘘だろ……」

「どうする?あの部屋に行くのはあまりにもリスクが大きすぎる。」

そりゃそうだ。得体のしれない人形。しかも動く。警戒しないでいる方がおかしすぎる。だがー

「吹雪。一つだけわかったことがある。」

「……何?」

「おそらくではあるが、”あれ”が中学生二人の失踪事件に関わっている可能性があるのと……」

「なんだ?」

「あれが、おそらく優しくないセキュリティなんだろう。」

「……あんな人形までもがセキュリティなのかよ。」

「二人が行方不明になっていることから、大体予測すると……”やつ”に捕まったら最後ー」

殺される。二人は、暗黙のうちに理解した。


しばらくしてー

「進むぞ。とりあえずいつでも撃てるようにしといてくれ。」

「わかった。だが、気ぃつけるぞ。」

吹雪もホルスターから抜き、スライドを動かし、安全装置を外す。

そして進んだ。まず、右側のドアを調べた。が、開かなかった。

「……行くしか無えのか。」

「だな。」

慎重に左のドアを開ける。

中はとても暗く、ずっと先にこの通路の出口のようなものが見えた。

「「・・・・・・」」

二人は意識を全体に集中させていた。しかし、動く物に対して集中していたので、動いていない左側の物には気づかなかった。

プシュウウウ

「「ワギャーーーー‼」」

二人は横のパイプから噴出された白いガスに驚いた。

「うーわ、びっくりしたー。」

「こんなびっくり要素まであんのかよ…」

直後、背後でごくかすかな音が鳴った。だが、全体に意識を集中させていた2人にとっては耳元で聞こえたのと等しかった。

((後ろ‼))

バッ バッ ジャキッ

一瞬、ほんの一瞬だけこちらを見ていた大きな姿が見えた。だがその姿は、こちらが気づきその顔をはっきりと確認する前に、一瞬で姿をくらました。

吹雪が追おうとするところを文也は止めた。

「何すんだよ‼」

「落ち着けバカ。今奴を追って何になる。」

「……」

「得体が知れない上、銃が効くかどうかもわかんねー。そんな情報がほぼゼロな相手をエアガン一丁で制圧できると思うか?」

「……悪ぃ。少し熱くなった。ありがとう。」

「おう。んじゃあ、進もうぜ。そして、さっさとこっから出よう。」

「ああ。行くか。」

そして出口にたどり着いた。ドアを開けるとー

「おお、結構開けてんなぁ。」

「さっきと大違いだ。」

二人は一面コンクリートで覆われた天井がかなり高い部屋に出た。

正面に2階へ続く階段があり左側に登る場所があった。その通路は我々の上の方へと続いているようだった。左側にも空間があり、ビデオデッキがあったが肝心のVHSはなかった。そして、先ほどの土産売り場と同様に分解され、血が流れたおもちゃが転々としていた。

「うわっ。ここでもか…」

「どうやら、この会社はなんかありそうだな……とりあえず先進もう。」

「どうする?」

「まず上に上がるか。」

二人は階段を上がった。右側にまた通路があり、操作装置らしきものと、青く光る立方体の形をしたものがあった。

「何だあれ?」

「あー…ってことは…」

「わかったのか?それか、思い出したのか?」

「ああ。俺の記憶が正しけりゃあ…」

スタスタスタスタ

「やっぱりだ。ここだったか。」

「えーっと、どこ?ここ。」

二人が着いたのは、まさしく”廃工場”と呼べるにふさわしい具合の場所だった。様々なものがベルトコンベアーの両側に散乱し、左手前には棚があったがバタバタと倒れていた。更に、奥や手前、あらゆるところに散乱した段ボール箱、右側から突き出ているベルトコンベアーも今では飾りでしかなくなっていた。棚も汚れており、時間の長さを醸し出していた。そして、上部にはクレーンと奥に赤いグラブパックの手が入ったガラスケースのような側面が透明な板でできた箱に入っていた。

奥には青と赤のグラブパックの認証機があった。

「ここは、確か貨物室。」

「あ〜なるほど。ん?じゃあ、これは何なんだ?」

そう言って吹雪は青く光る立方体を拾って示した。

「そいつはモジュール。操作盤を使うために必要なエネルギーの塊みたいなもんだ。」

「え⁉じゃあ、こいつを全部集めればー」

「ああ、あのクレーンを動かし、赤いグラブパックを取ることができる。」

「んじゃあ、善は急げだ。探そうぜ‼」

そして二人は探した。まず二人は下の階に行くために落ちた。

落下地点に段ボール箱が大量にあったため大して痛みはなかった。

まず、左側の棚に一つ。

次にグラブパックの認証機の少し右隣に一つ。

最後のモジュールは貨物室からモジュール操作室へとつながる扉の手前にあった。

「結構いろんなとこに散らばってたな。」

「ああ、でもこれで全部だ。」

「それじゃー…あれ?あのビデオデッキは?」

「ああ、多分さっきと同じようにVHSが対応しているんだろう。」

「んー…探すか?」

「……よし。一応探してみようか。」

そして二人はVHSを探し始めた。二人は倒れた2つ目の物置から見つけた。

「んなところにあったのか。」

「ああ、確認するぞ。」

VHSをビデオデッキに入れた。外国人らしき二人の会話だった。

[おいリッチ、Huggy Wuggyの箱が何処行ったか知ってるか?]

[知らねーよ!んなもん。管理人が最後にここを片付けたのはいつか覚えてるか?]

[いいや?]

[だろ?この会社は誰もちゃんとした仕事してねーんだよ。本国の孤児院のための荷物がこっちに届いて以来、この倉庫はめちゃくちゃだよ‼]

[確かに。]

[いいキャンペーンだってのはわかるが......問題は、Huggyの箱がどっかに行っちまったことなんだよ‼]

[落ち着けリッチ…]

[(ため息)わかってる…わかってるよ…孤児院のためだ…だが…俺は箱が減ってほしいだけなんだ。一個でも減ってくれりゃあ、助かるし、結構変わるんだけどな…あ?助かるだと?何いってんだ俺は…]

「これは…」

「⁇」

「作業員の会話内容…?だが、一体どういう…」

「…うん、まあとりあえず、グラブパックを取ろうぜ。」

「…ああそうだな。」

二人は、再び上の階にいって、モジュールをはめ込み始めた。

2つ目をはめ込んだ直後、

パアン プシュー チュイン

文也が撃った。

「……」

予め、すぐに接続できるように上においておいたため、撃った直後に全てのモジュールがはめ込まれた。

クレーンが動き始めた。まず反対側に行き、着くとグラブパックが入ったケースを掴んだ。そして持ち上げ、再び戻り始めた。そして、文也たちの手前で力尽きグラブパックの入ったケースを落とした。その際にガラスが割れて、グラブパックのみが残った。

「おい…何があった…?」

「……今…あるものが見えたんだ。」

「まさか……」

「そう。” 奴” だ。」

(一瞬見えたのは青い頭、黒い目、赤い口…)

文也が何も言わずとも何が見えたのかを吹雪は把握した。

Huggy Wuggy

(だが、さっきの手といい、顔を見せた時といいこの感じ…まるで…)

「なあ、文也…」

「どうした?」

「少しばかり、違和感があったんだ。さっきの奴に見られている感覚…まるで…狩りみたいな…」

狩り その言葉が文也の頭で反芻された。

(おそらく奴には俺らを殺すだけの力があるはず…)

(…だが何で…)

「「…まあいっか。」」

二人の声が重なった。

「まずは、俺たちの目的を果たそうぜ。」

「ああ…ん?もう特ダネは取ったと思うが?」

「あーそっかー。わりい、伝え忘れてたわ。」

「?」

「俺がここに来たのは、ある部屋を探すためなんだ。」

「ある部屋?何だそれ?」

「んーまあ説明すんのもめんどくせーから、これだけ伝えとくわ。” ケシの花の部屋” 。多分、これが俺の見つける必要がある場所なんだ。」

「……ひょっとして、昨日の夜にあった手紙と関係してんのか?」

「ああ。でもとりあえず先、進もうぜ。」

そして二人は落ちていたグラブパックを右側に装着し、ベルトコンベアーの先の認証機に療法を接続させた。

すると、重々しい音が鳴り、ベルトコンベアーのドアが開いた。その先は通路のようになっており、とても暗かった。

俺たちの未来を暗示しているかのように。


「行くぞ。」

「おう。」

二人はしゃがんでドアを潜り、ベルトコンベアーの先に進んだ。すると、先は滑り台のようになっていた。

「うおー⁉」

「わー‼」

滑り終わると、先は閉じており、発電室と同じような端子があった。

「こんなところが…」

「知らねーのか?」

「当たり前だ。」

「まあまずは、こいつをなんとかしますか。」

そう言って吹雪は端子を指さした。文也たちがいるこの場所は、中央が少し高く、右側に通路があった。到着地点側の端子から中央へはローラーでできた坂道だったので、中央へ進むことはできなかった。

なので、二人は右側へいった。ここも中央へは行けなかった。

しかし、電力をつなげるポールが途中にあった。

再び進んだ。また右に曲がると、通路があり、到着地点から反対側のようだった。ここからなら中央へ行ける。で、登ると…

「へー。こんなんになってんのか。」

中央から見渡すと、正面には到着地点が、右側に発電側の端子が、左側にポールが見える状態になった。

「この状態なら…可能かもしれない。」

「おお、マジか。やってみて。」

まず文也は、右の赤い手を中央から右側の端子へ発射。

次に、左側へ移って滑り落ちる。するとちょうど坂の中央のポールに触れることで接続。最後にぎりぎりまで伸ばして左の青い手を発射した。だが、接続できなかった。

「あれ?どうした?」

「……多分、限界だったんだろう。ギリギリすぎたんだ。」

「え?じゃあー」

「あるいは…ちょっと試してみるか。」

そう言って文也は再び中央に戻り、左の青い手を右側の端子へ発射。

後は同じ手順を踏み、最後に右の赤い手を発射。するとー

プシュー ウィーン

開いた。

「よっしゃ。」(軽くガッツポーズ)

「おーすげーな。」

「逆だったんだ。多分。赤と青が逆だったから接続出来なかっただけで、それを逆転させたからいけたんだ。」

「おっし、進もうぜー」

「おー」

開いたドアから先は上へと続いていた。ぐるぐると回るらせん状の坂道となっており、一周したぐらいで先の見えない道となっていた。足元に所々あるライトがなんとかの頼りだった。しばらく二人は無言で歩いていた。しかし二人はいつまた奴が来るのかわからないので前後左右に気を配っていた。なので、上から何かが落ちてくるとは考えもしなかった。

ビー ビー ビー プシューガラガラガラ

「「ワギャー⁉」」

急にブザーが鳴り、上から分解されたおもちゃが降ってきた。

パニック状態になった二人はなるべく早くこの場所を抜けるためにめちゃくちゃ走った。

途中二回ほどブザーが鳴り、おもちゃが出てきたがその度に騒ぎまくって、最終的にベルトコンベアーの先のように滑り台のような坂があり、滑り落ちた。

「「わ〜〜〜⁉」」

そしてー

「うおっ⁉」

「ぐっ‼」

ベチッ スタッ

二人は広い場所に出た。その場所は、先程の広場よりも更に広く、天井も更に高かった。上の方にも通路があり、左奥には貨物用のロードが、左側には顔の形をした機械のようなものが3台あった。その上に

”MAKE・A・FRIEND”の文字があった。二人が出てきた通路の後ろには材料が入っていると思われるケースとレバーがあった。

「すごいデザインだな。」

「ああ、本当…」

「とりあえずーおっ、扉発見。」

そして扉に近づくと、

「あれ?……すげーなこの扉。」

「何が?」

「おもちゃが鍵になってるらしいぞ。」

「マジ?じゃあ、これ使うか。」

そう言って吹雪はおもちゃづくりに使用されると思われる機械を指さした。

「だな。」

二人が動力源に向かうとー

「「need power ?」」

電力が必要らしい。

「どうする?」

電力源を探す文也。だが周囲を探したが動力源らしきものは見当たらなかった。

(となると…上)

文也が上を見てみると、

(ドンピシャ‼)

金網状の通路と二本の柱が見えた。

「見つけたぞ、吹雪。」

「あ、じゃあ文也頼むわ。」

「おう、わかった…だが気をつけろよ。やつが来ないとも限らない。」

「大丈夫だって。」

なので、上に行くことにした。今度は簡単だった。動力源を探す際に階段を見つけていたからだ。階段を登った先にはビデオデッキがあった。右側に道があったが肝心のVHSがなかったため先を急ぐ事にした。だが、通路がなくなっていた。

(……何かあるはず。何か……ん?)

文也は取っ手を見つけた。

(まさか)

グラブパックを発射、手が取っ手を掴んだ。そして引っ張るとー

ガラガラガラ

(よっしゃ)

道ができた。

早速通り、電極のドアを開放。

左の青い手を電極へと接続させた。

(さて、どうすっかな…)

文也がいる上の部分は、足場が一部しかなかった上に逆s字のような形になっていた。だが、中央に通路を作ることが可能になっていた。

(頭の中でやってみっかー。中央に二本の柱があり、電気を流すにはそこを通る必要がある。だが、この状態からそれをやるにはコードが足りなすぎる。そういや、中央に台があったっけ……それを繋ぐ端子側へ運べれば‼)

「試すか…」

そして文也は繋ぐ端子側へと足場を動かし、頭の中で再度確認した。

(うん。イケる。)

そして文也は左側からでたコードを最も近い柱へ触れさせ、左側から回った。次の柱には右側から回り、中央にできた道を通って端子へ接続させた。

バチバチバチッ ピコンピコン

「よっしゃ。吹雪ー行けるぞー。」

「オッケー。んじゃ始めるわー。」

ポチッ ウィーン

スイッチを押すと呼応するように機械たちの目が開いた。

「材料を出して。」

「おう。」

ガシャン ガシャン ガシャン

おもちゃの材料は流れていき、ギザギザの歯がついた機械の中に入っていった。何度か機械の口が動いた後に材料が組み立てられたおもちゃが流れてきた。その次に最も四角に近い形をした機械の中に入っていった。すると、着色されたおもちゃが出てきた。最後に目玉がスプリングで繋がった機械の中に通されていき、レーザーで認証された。その後完成したおもちゃが出てきた。

「おっし、じゃあ開けるか。」

「おう、戻るわ。」

文也が来た道を戻ろうとするとー

「あれ?」ピンクのVHSがあった。

「ラッキー。」

ウィーン シュポッ パシッ

「じゃ、聞いてみっか。」

[さて、ステラ。どうして、ここで働きたいと思ったの?]

[子供の頃、人形と遊んでいるときはマジカルでした。人形と遊べば私の部屋からすぐに世界の何処でも行けるような感じでした。とても良い気分でした。同じ様な経験を与えるここで働く機会があることも…

ですが……子供の時に戻りたい時があります。

変なこと言ってるでしょ?

”大人はただ年を取った子供”だって。

自分が本当に大人に思える時期があるかしら?

人はただ年を取って、取って…そしていずれ死ぬの。

フフッ、流石に人は永遠に若いままいられませんからね。

色々ありますよ。人の何倍も生きている木とか。そう考えると、私達はそれらよりもずーっと若いと思いますね。]

[あ……話が少しズレてしまいましたね。]

「……何だこれ。」

「……わからねえ。とりあえず鍵を認証させるか。」

「おう……」

文也は階段を使い、吹雪と合流。

そして、鍵だったおもちゃが認証されドアが開いた。左右にドアが1つずつあり、奥は真っ暗だった。

「開いたー」

「行くぞ。」

そして踏み出す二人。

直後ー

「うわっ⁉」

「……嘘だろ…」

二人が進もうとした直後、暗闇から何かが出てきた。

ライトの下に照らし出されたその姿はー

青い顔と身体、長い腕と足、黄色い手足、黒い目、さっきまで笑っていた赤い口は醜く歪ませ、奥に大量の歯を見せて嗤っていた。

Huggy Wuggyーそのものだった。

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