scene 3: Start of the playtime for we

翌朝、昨日の夜のことは夢だったのではないかと思ったが、

(夢じゃないよ。) と言うように黄色いカセットテープが目に入った。

現実に引き戻された感覚がした。

しばらく、俺はそのカセットテープと封筒と手紙を見続けて、思った。

(これは現実だ。ならば、俺がやるべきことは…playtime社を調べることしかないか。さて…)

「まずは、朝ごはんからだな。」

少し遅めの朝ごはんにした。

(前日に何も作ってないからなー)

楽かつ美味い卵かけご飯を作る。

作ったご飯を食べ終え、洗い物から歯磨き、着替え、洗濯など家事全般を終わらせ、準備に取り掛かった。


まず、懐中電灯。廃工場だし、夜だし、一応。

次に、ザイル。使えない場所があるかもしれないから。

そして、予備バッテリー。スマホの電池が尽きたら終わるからな。

他にも、携帯食料、電池、水…諸々をバックパックに詰め込む。

最後に、護身用のエアガン。ハンドガン型で、それなりに強力。

(前に犯人逮捕に使ったらたまたま当たったスチール缶、穴空いたっけ)

弾倉と弾丸も一応。探偵事務所を開いたときから、二人で買って強化した。違法にはなるが、一応許可は取ってある。

(できれば使われることがないといいけど…)

そして、ホルスターに入れて、上からなるべく動きやすく裾が長い服をはおり(銃を隠すために)、準備万端。さて、準備はもう終わったし、今十三時か。

探索の時刻までまだ時間あるな。よし、寝よう……………


夢を見ていた。

昔の夢だ。

playtime社?何で俺こんなとこにいるんだろ。

「社員の皆さんへ。本日をもちまして、playtime社を閉鎖しようと思います。長い間、ありがとうございました。」

は?なんで?

「本国の方で、事故が発生しまして、しばらくここの工場も閉鎖しろと命令が来まして…」

勝手が過ぎんだろ。俺たちだって働いているんだ。

「皆さんの口座に、退職金は振り込んでおきましたので。それでは。」

ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな…………

そして、意識が薄れてきてー


目が覚めた。

(今何時だ)

真っ先にそう思った。

午後十七時 良かった。今から家を出れば間に合う。

そして、駅で待ち合わせ、電車に乗った。

「何持ってきた?」吹雪が聞いてきた。

「これ。」そう言って俺は、持ってきたものを見せた。

「エアガンまで⁉」小声で驚く吹雪。(他の人に聞かれたらまずいから)

「そういうお前は?」

「俺はこれかな。」

そう言って見せた肩掛けバッグの中には、カメラ、カメラ用の電池、メモ帳とペン、懐中電灯(ランタン型)、水、などなど。そしてエアガン。

「お前もじゃねえか」そう言って二人して小声で笑った。

そうこうしているうちに、電車は駅についた。

駅から歩いていきplaytime社に到着した。久し振りに来たが、入り口が小さく見えるほどとても大きかった。煙突が何本も突き出ており、入り口の上には大きな「P」の文字。所々剥げた塗装が、廃工場らしさを醸し出していた。そして、もう日が完全に沈み、夜の世界となった。

「なんだか過去に戻ってきたみたいだな。」しみじみいった。だが、そんな俺を励ましたのか、

「大丈夫。これは今であり、現実だ。何より俺がいる。」と言った。

思わず吹き出し、

「お前がいたって変わらねえだろ。」そう言って不安を吹き飛ばすように笑い飛ばした。


ギイー カチッ

久し振りに工場の中に入った。左右に部屋があり、正面にはフロントデスクがあり、床は白と黄色、赤、青のタイルが入り混じっていた。

そして、Huggy Wuggyのイラストと[welcome]の文字。外見と同様に所々ペンキが剥がれていた。

「廃工場なだけあって暗いな。」

「一応懐中電灯持って来といて正解だったわ。」

「おい、見てみろ。」

そう言って吹雪は、ランタン型の懐中電灯で足元を照らした。足跡だ。ホコリが積もった中に、小学生よりも大きい足跡があった。

「中学生位だな。この感じだと。」

「行方不明になった二人の足跡と見て、間違いなさそうだな。」

「ああ。足跡の方向は……いや、無理だな。」

足跡は二つあり、更に入り乱れていたため、方向などは全く分からなくなっていた。

「ん?なんだこれ。」

吹雪が見つけたのはVHSー今で言うビデオテープだ。

(そういや俺のところに送られてきたのも同じタイプだったっけ。)

「見てみるか。」

「んー。そうだな。」

そして、ビデオテープをちょうど良い所にあったデッキに差し込んだ。するとー

[やあ。私はレイス・ピエール。playtime社の工場のイノベーション部 部長だ。君がこのビデオを見ていると言うことは…君は不法侵入者だと言うことだ‼実は、日本の工場でもこのテープを流してもらっているんだよ‼だからね、これだけは知っていて欲しいんだ。

我々はクオリティの高いおもちゃと優れた保育サービスが自慢だが、セキュリティも自慢でね。]

「よく喋るな。」

吹き出す文也。「確かに。」

[例えば、施設のあちこちにモーションセンサーがある。これに触れればどうなるかって?工場のアラームが鳴り、自動で警察を呼ぶんだ。凄いだろう?ちなみにこのセキュリティは優しい方だ。他には何があるかな?まっ、言わないけどね。さて、これが忠告だ。帰るなら今のうちだぞ?君が何をしに来たかは知らんが、どうなっても知らないからね。]

そう言ってビデオは終わった。

「面倒だな…モーションセンサーがあるのかよ。」

「まあいいさ。モーションセンサーの位置はだいたい頭の中に入っているし、問題ねーよ。」

「そうか。で、どうする?」

「まずは、メインホールに移動しないと。鍵を探すぞ。」

「どうやって?」

「右の部屋に行くぞ。」

「右の部屋で何すんだ?」

「そこでコードを探すんだよ。」

ガチャリ

入り口の右の部屋は、ギフトショップだった。未開封のおもちゃが散乱しており、工場が閉鎖しても役割を継続している列車がぐるぐると回っていた。だが、それらよりももっと目を引くものがレジに置いてあった。

「うわっ。」

「……?」

二人の目の前のレジには分解されたおもちゃが置いてあった。

分解箇所から血が流れたおもちゃが。

「何だこりゃ…?」

「ただのおもちゃ…なわけねーな。」

しばし眺めたあと、文也は血が流れたおもちゃを掴んだ。

「質感等は普通のおもちゃと大差ねーな。」

「じゃあなんで血だまりができてんだ?」

文也は黙り込んだ。

「………情報が足りない。とりあえず、工場内部に入ろう。何かが起こっていたんだ。早いとこ解き明かした方がいい。とりあえず、コードを探そう。」

「えーっと…どこにあるの?」

「ああ、実は右の部屋の暗証番号がカラーコードになっているんだ。それを探さないと……どこだっけなー?」

「え、忘れた?」

「そりゃそうだ。何年も前だもん。ただ、上にあったような気がすんな。」

「上に?上っつったら…あの列車か?」

吹雪が指したのは、工場が閉鎖してなお自らの役割を果たそうと上で回り続けている列車だった。緑の先頭車両(しかも機関車)から桃色、黄色、赤の車体とそれぞれの車体に矢印があり右から左に向いていた。

「んー……ああ、あれだろうな。」

「んじゃあ、順番を推測して、緑、桃色、黄色、赤の順番かな?」

「多分。よし、ものは試しだ。行ってみよう。」

反対側の部屋の前に着いた。透明なドアでできていたが、見た目に寄らず頑丈だった。

「えーっと。緑、桃色、黄色、赤っと。」

ピッ ピッ ピッ ピッ ガチャリ ドアが開いた。

「よっしゃ。」(軽くガッツポーズ)

左側の部屋はSecurity roomだった。

鍵は、全く無かった。

「工場の人が全部持ってったのかな?」

「…だろうな。でもメインの鍵はあるぜ。」

「どこに?」

「こいつだよ。」

そう言って文也はガラスケースに入ったおもちゃを指した。

「何だそれ。」

「グラフパック。多分これを見ればわかるんじゃねーの?」

近くにあったカセットテープとテレビを指した。

「ふーん。んじゃあ入れてみっか。」

そして、やや暗めの音楽が流れたのち商品の説明が始まった。

グラフパックはplaytime社の商品であり、肩に乗せて左右の発射トリガーを押すことで、手を発射することができるおもちゃだった。

他にも様々な用途があり、手形を承認することで、ドアを開けること、遠くにあるものを取ること、電気を通すことも可能らしい。

「これが鍵ってこと?」

「ああ。工場職員などはいつもこれをおぶさっていた。」

最後に……頭を手で掴んでもぎとるアニメーションが流れて終わった。

「……中々シュールだな。最後のやつ。」

「ああ。入社当初からそう思ってた。」

ケースが開いた。肩にかける簡易的なロープの後ろにワイヤーが巻き付いており、そこから左右の肩の上の方から出るようにU字の先の部分が突出しており、先端に手がついていた。持ち手は伸縮可能で、発車部分と背中の箱が蛇腹状のコードで繋がっていた。だが、左側のみで右側はなかった。

「片方だけ?」

「おかしいな。グラフパックは左右でワンセットなのに。まあ、基本使用するのは、左側だけだし、まあいっか。吹雪、頼むわ。」

「オッケー......ってなんでだよ。」

「俺はバックパック背負ってるし...あ、でも一応背負って使えるわ。」

「じゃあ頼む。」

(背負ってもらおうとしたのに、墓穴を掘って背負うことになるとは...)

グラフパックを背負った。そして、入り口の場所に戻り、入場ゲートを抜け青いグラフパックで認証させドアが開いた。

悪夢が幕を開けるかのように、いや、もう既に開いてしまったのかもしれなかった。

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