寂しくなりたい

佐原マカ

寂しくなりたい

 最近、連絡が沢山やってくるようになった。僕は求めていないのに、次々と。

2、3週間前の自分がどんなことを考えていたか、もう思い出せない。まるで遥か昔の存在みたいに感じる。今の自分とは距離ができてしまって、その「昔の自分」に嫉妬していることさえある。


 あの頃の僕は、他人と関わらずに、自分のことだけを考えていた。そんな自分を確認するたび、寂しさを噛みしめていたけど、同時にそれを嫌だとも思っていたんだ。

そんな時に、何故か仲の良い人ができた。すると、あの寂しい感情を抱くことが少なくなった。人との繋がりができて、少しは満たされたように感じていた。けれど、親しい人ができると、今度は相手に裏切られるのが怖くなってしまった。それが怖くて、必死に自分のことを話すようになった。寂しさの中で妄想してきた、たくさんの嘘を話してしまったんだと思う。いつの間にか疲れてしまった。


 かつて、あれほど欲しかった「親しい人」ができたことで、これまで自分の中に閉じ込めていた、自分だけの世界で完結していた妄想や自分自身を、他人と共有しなければならなくなった。


 みんなは、共有することが楽しいと言う。だけど、僕にとっては違う。自分のことが相手にバレてしまうし、相手のことも知りすぎてしまう。そうなると、逆に寂しさが募ってしまうんだ。寂しさを解消するために築いたはずの関係が、むしろ僕をより一層、孤独に追い込んでいる気がしてならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

寂しくなりたい 佐原マカ @maka90402

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画