第2話
彼女と私が乗り合わせる時間はたった一駅。私より先に乗っていた彼女は、私が乗った次の駅で降りてしまうからだ。たった一駅。その区間が私にとっての幸せ。
「次はー」
今日は、疲れた様子の彼女が眠ってしまっていた。彼女の降りるはずの駅に止まっても起きる様子がない。私は、オロオロとしつつ、彼女に話しかけてみた。
「すみません、ここの駅、いつも降りてるところじゃないですか?」
ストーカーに間違われないかとも心配になった。しかし、彼女は起きると「あ!!」と大声をあげて、お礼を言って降りていった。少しでも彼女の役に立てたと思うと嬉しくて、また私は呟いったーを開く。
<憧れの人が乗り過ごしそうになったのを助けた!話せて嬉しい。>
そのあと、しばらくタイムラインを追っていると見覚えのある人のつぶやきが流れてくる。
<電車で乗り過ごしそうになったのを、気になってる人が助けてくれた。>
<@yukariさん 奇遇ですね。さっき私、憧れの人が乗り過ごしそうになったのを助けました!>
そう、よく絡むyukariさん。ほぼ同じタイミングで同じような出来事が起こっていたのだ。
<@有未 まさか、有未ちゃんだったりしてね!笑>
<@yukari え!まさか〜!そんなに世間狭いかなー?>
本当、yukariさんなのでは、と思うくらいには同じタイミング。yukariさんならば、どんなに良いことだろう。でも、きっと私なんてみたら幻滅しちゃうかなぁ。
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