第二章 死せる再生者 ④
離宮でのフェリオの告白から2日後、ウェド・カークとコンジェルトンは皇帝ファルムスに謁見することとなった。
通常であれば、如何に重臣ともあれ、皇帝への面会要請がここまで早急に通ることはない。しかし今回の場合は皇女フェリオが内裏に対し事前に話を通すことで特例でそれが可能となった。
「フェリオから、大体の話は聞いておる」
「はっ、恐懼の極みであります。陛下」
「たわけどもが…確かに諸君らの魔王討伐の功績は大きい。さらばこそ、この異例とも言える抜擢を行ったというものを…」
そう言うと、ファルムスは語気を強めた。
「それを貴様らは、たった数日で返上したいだと!?そんなことをすればそれこそ元老院の者共は陰で儂を笑うだろう、儂の顔に泥を塗りたいのかッ」
「申し訳ございません閣下!これまでの発言はすべて撤回いたします!」
二人は平身低頭で謝罪した。
「しかし一つお伝えさせてください」
ウェド・カークは如何にも恐縮した面持ちで口を開いた。
「この帝国には、今の我々の立場を快く思わない者が数多くおります。そしてそれは、大変申し訳難いのでありますが、単なる元老院の次元に留まらない可能性もあるのです。それが今回フェリオ様がわざわざお口添えをしてくださった理由でもあります」
「何!?」
「今回の魔王大戦は帝国内に少なからず動揺と亀裂を齎しました。それが表面化するのは、魔王という共通の敵が倒された今後になるでしょう。例えば功績のあった者、なかった者、あるいは功績を自負しているがそれが正当に評価されていないと思っている者…」
ウェド・カークは続ける。
「皇帝陛下、これは単に我々の身の安全だけの問題ではないのです。大変恐れ多いことですが、国家、皇室の安寧のためにも、どうか慎重なご判断を」
話を聞くとファルムスははっとした表情を見せ、冷静さを取り戻した。
「なるほどフェリオめ、あれは昔から賢い娘であったが、そこまで見抜いていたとは…。ふむ、儂も年のせいか目が曇っておったかもしれん…」
「皇帝陛下、私もここにいるコンジェルトンも、これからは心を入れ替え帝国に忠義を尽くさせていただきます。これまでのご無礼な発言、どうかご容赦を」
二人は再び深々と頭を下げた。
「ふむ、仕方がない。今回の件は不問としよう。この宮殿、さらに帝都には腕が良く、何より儂に忠誠を誓った護衛がいくらでもいる。そやつらには諸君らの身柄は儂の身柄と思い、護衛するように伝えておこう。それにファリオの妊娠の件もある。諸君らにはこれからも大いに働いてもらわねばならぬ」
謁見を終え、二人は内裏を出た。
「けんもほろろだったな」コンジェルトンは重い口を開いた。
「うむ」
ウェド・カークの口調は不思議と軽やかであった。
「だが目的は達せられた」
「何、目的だと!?一体どこにそんなものが!」
コンジェルトンの口調はやや怒気を含んでいた。彼はほとんど発言機会を与えられる間もなく自らの希望を退けられたのだ。
「目的?それは”恐怖心”だよ。今回の謁見は皇帝陛下に恐怖心を植え付けることが目的だったのだ。コンジェルトンよ。お前ともあろうものが、俺の策を見抜けぬとはな…」
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