第一章 英雄たちの帰還 ③
帝都アレニアの宮殿へと繋がる大通りは沢山の群衆と花弁によって埋め尽くされていた。それとともに平和を象徴する白い鳩が放たれ、その白き羽と糞もまた群衆の頭上に降り注いだ。
集合住宅からは人々が手を振り、飲食店はまたとない書き入れ時と客を呼び込む。一方で大きな建物の屋上にはクロスボウを手にした衛兵が配置され、厳しく目を光らせた。
コンジェルトンら勇者パーティーの一行が前を通ると、群衆の喝采は一層のこと大きくなった。しかしそれは第一皇子グレイムス、第三皇子ガルフリードに対する喝采の小ささも意味していた。
それを察し、ガルフリードは「チッ」と小さく舌打ちをした。事実グレイムス、ガルフリードは皇族男子という立場でありながら、この度の「魔王大戦」においてはこれといった活躍を果たさなかったのだ。
その日の夜、宮廷内の離宮にて。
「いやあ、ようやく終わったな、下手すると冒険の旅より草臥れたぜ」とパルムス。
酒が入り饒舌になったパルムスは喋り続けた。
「それにしてもよお、地方で愚連隊か山賊みたいなことやってた俺等が、帝都に英雄として迎え入れられるとは…まさかこんなことが起きるなんてな…」
「私は違うぞ。私はヒルメスと出会う前は生まれ育ったファーランド地方の修道院を出て諸国を放浪する無宿渡世人であった」とコンジェルトン。
「なあに傍から見れば大して変わらんさ」とエイデン。「ワシとお前が初めてであったのも地元の親分に請われての”出入り”の最中じゃっただろう」
「お前はいつも一言多いなあ」と返すコンジェルトン。
「しかし明日は叙勲式か。俺たちは貴族として列せられ、もしかすると閣僚の椅子も…こんなことは一年前には夢にも思わなかった…」と言いかけたところでパルムスははっとした。
「あ、すまねえコンジェルトン、エイデン、ウェド・カーク。お前たちは俺なんかよりずっと活躍したのに…」
「いやいいんじゃパルムス。ワシらには閣僚なんかは荷が重すぎるよ。元老院の議員として年2回帝都に上洛するのだって面倒臭いくらいじゃ」
帝国において閣僚に任命されるのは実質的にヒト族のみであり、グラスランナー、エルフ、ドワーフなどは蚊帳の外であった。
「それにしてもウェドよ、貴様はなぜ黙りこくってるんだ?不気味なくらいだが…」とパルムスはウェド・カークに水を向けた。
「いや、お前たち皇帝陛下の顔をちゃんと見ていなかったのか?」とウェド・カーク。
「さあ?何?」
「陛下は、もうあまり長く持たないかもしれない」
「何!?なんてことをいうんだウェドよ?」一同は一気に色めき立った。
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