第8話キャンプ旅行
我々のサークルの名前は、パイ。
空集合の事で、何事にも属さないと言う意味だ。
パイの連中は。夏休みの前半は、バイトで頑張り、長野旅行に出掛けた。
電車の中で、行きたい場所等を相談した。松本行きの電車に乗り換えて、駅に立ったら、信州そばを皆んなで食べた。
レンタカーを2台借りて、運転免許を持つ、大崎と植林がキャンプ場まで運転した。
途中、スーパーに寄り、食事の材料と酒を買いコテージに着いた。
1階のベッドは男子、2階のベッドは女子と決めた。
到着して、荷物を置いたら雪のないスキー場に行った。
この時に、デビューしたばっかりのDA PUMPの曲がエンドレスで流れていた。
リフトに乗ると、坂の途中にトイレットペーパーが落ちていた。
誰だ!この坂で脱糞したヤツは?
と、馬鹿馬鹿しい話に大笑い。
夕食はカレーだった。
カレーは女子が作り、あさりの酒蒸しとニジマスのバター焼きを坪井が作り、大崎は寿司屋でバイトしていたので、握り寿司を作っていた。
皆んなで、夕食を食べた。
ニュースが流れた。キャンプ場なのに、テレビがあった。
和歌山でカレーに毒をもった事件が起きていて、中本が女子に、
「ねぇ、このカレーにヒ素なんて入れてないよな?」
と、つぶやくと、
「高山がフンッ!失礼ね」
と、言い返した。
夜は、広場でキャンプファイヤーをしていたのだが、女子はドラマの最終回が見たいと言って、コテージの中。
男子は、キャンプファイヤーを楽しんだ。
キャンプファイヤーの言っても、単なる焚き火だ。
坪井や古屋は焚き火の枝を掴み、タバコに火をつけた。
それを見た、他の男子もライターでは無く、枝の火を喫煙に使った。
女子もいないのに、花火で盛り上がった。
8月だと言うのに、白馬は夜は寒かった。
焚き火で温まり、消火してコテージに戻る。
麻雀をした。
酔っ払って、坪井と大崎は女子の寝床に向かった。
「何よ!ここは男子禁制なのよ!」
「うるせぇ、この醜女!この前、寿司食わせただろうが?」
と、坪井は川畑に言うと、
「久美子ちゃん。それホント?」
と、三井が言った。
「このブサイクが、無理やり……」
「無理やりだと?お前、カワハギの刺し身1人で完食しただろうが!」
「ねえねえ、坪井君。こんな腐れ売女に寿司奢ったの?」
「……うん。ゴメン、大崎ジジイ」
「いや、良いんだよ。いつも、ケンカしてるけど、パフォーマンスなんだね」
「……かな?」
女子は23時に寝た。男子は夜が明けるまで、麻雀をした。坪井は、余り麻雀に詳しくない。
囲碁、将棋はアマ三段だが、麻雀まで覚えると、いよいよ金が失くなるのが怖くて役は簡単なモノしか覚えていなかった。
賭け麻雀だったので、初心者の坪井は16000円支払った。
勝った古屋は笑顔だ。
翌日は雨。
女子はテレビに夢中になり、高校野球を見ていた。
横浜高校の松坂を皆んな注目していた。
男子はパチンコ屋に行った。
釘が渋いの何の。
全員負けた。そして、帰りに酒を買って、コテージで飲んだ。
飲み会は夜中の3時まで続いた。
また、大崎と植林が運転して、駅で降りた。
昼の電車で帰った。
皆んな笑顔だった。
大学は人生のモラトリアム時間。皆んなどんな将来を考えているのか?
お土産は、恵と横井の2人分買って帰った。
早速、焼き肉屋に行くと、恵がバイトしていた。
「今日は、20時アガリだから待ってて
ね」
と、坪井に恵は言った。
キャリーケースを引き摺りながら、坪井のアパートに2人で向かった。
お土産は、信州そばと茶碗だった。
名前がひらがなで、「めぐみ」と書いてあったので、坪井はそれを選んだのだ。
横井の分はクロゼットに仕舞った。
久しぶりの2人は激しいセックスをした。
すると、恵が言った。
「健君、私乳がんかも知れないの」
坪井は衝撃を受けた。恵は坪井の右手を掴み、左胸なしこりを触らせた。
なるほど、卵大のしこりがあった。
「来週、市民病院で検査なの。大丈夫かなぁ?」
「心配すんな。今の医療は信用出来るから」
3日後、焼き肉屋に行くと恵の姿が無かった。
帰宅してから、恵に電話を掛けた。
「恵、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない!乳がんだった」
恵は電話越しに泣いていた。手術をするらしい。
坪井は手術日には付き添うと言った。少しでも気持ちを楽にさせたかったのだ。
手術日。
恵の家族と初めて対面した。両親ともに、坪井の素性は知っていて、
「すみませんねぇ。恵がこんな事になって」
「病気ですから、仕方ないです。どんな手術何ですか?」
「温存手術で、しこりだけ取り出します。なにせ、若いので胸の切除は余りに残酷で……」
「僕がいますから」
恵はストレッチャーで手術室に向かった。
家族と坪井に手を振った。
ここから、坪井は深き悩みに落ちる事になる。
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