第7話パチンコ屋にて

坪井はパチンコ屋に出掛けた。

引きが強くて、しょっちゅう勝っているのだが、今日は既にフィーバーデーモンに3万円突っ込んでいた。

当たりが来たのは4万円を投資してからだ。


大当りすると、可愛いお姉さん店員がニコニコしながら、ドル箱を持ってくる。

確変を引いたので、次回も当たるがまた、お姉さんがドル箱を運んでくる。

どうやら、お姉さん店員は坪井がお気に入りらしい。

だが、彼女がいるので声は掛けなかった。


結局、4万円突っ込んで4箱出た。2万円の負けだ。


たまには負ける可愛さもなければ、パチンコの神様に愛されない。

駅前の中華料理屋で生ビールを飲んでいたら、隣のテーブルに見知った顔の女性2人組が座っていた。

彼女らも、酒を飲んでいた。

ハッとした。この女性らはパチンコ屋の店員だった。

坪井は黙って飲んでいたが、声を掛けられた。

「お兄さん!お兄さん」

「は、はい」

「今日は残念でしたね、パチンコ」

「あ、2万円負けました」

「学生さん?」

「はい」


いつの間にか、坪井はお姉さん達のテーブルで食事を始めた。

「あの台、荒いですからね。ギンギラパラダイスのほうがマシですよ」

「権利モノねぇ」


彼女らは、オバサンが宮城と言って、若い女の子は横井と紹介された。

「どちらのご出身ですか?」

「え?オレ?鹿児島」

「あぁ〜だから、訛ってるんだ」

「悪いですか?」

「いいえ、全然、全然。訛りって、かっこいいですよね。今、若い子らの間で訛りがはやってるんです。関西弁は飽きたけど、九州や東北の方の発音って、可愛くて。お兄さんいくつ?」

「もうすぐで20歳の19歳です。お姉さんは学生?」

「違うよ。もう、23歳。馬鹿だから、高校卒業したら、あのパチンコ屋でずっと働いているの。お兄さんかっこいいから、何時もどの台を狙っているのか?と、探しています」

3人は食事を終えて、酒ばかり飲んでいた。

オバサンが最寄りのパチンコ屋に行きたいと言い出した。

3人はお勘定を済ますと、駅前のパチンコ屋へ。


オバサンは大工の源さん、坪井とお姉さんは雀士ウーロン牌に座る。お姉さんは2000円で時短を引く。お姉さんの台を見ていたら、5000円で坪井も時短を引いてしまった。

2人して、数箱出した。

オバサンは投資1万円で、確変を引いていた。

時間は21時半。

閉店なので、坪井は5箱で辞めた。お姉さんは8箱出していた。

坪井は昼間の負けを5000円勝ちにした。

お姉さんとオバサンの台を見にいく。ホタルの光が流れるとオバサンもまだ、確変なのに辞めなくてはいけなかった。一箱オマケを貰って辞めた。14箱も出していた。


オバサンは帰って行ったが、残された坪井とお姉さんは、また、飲みに行く。

携帯電話の交換をした。

坪井はジントニック、お姉さんはレッドアイを飲みながら、今度遊ぶ約束をした。


「坪井君には彼女がいるの?」

「まぁね。つい、最近出来たよ。お姉さんは?」

「私は、いないよ。坪井君が良いな。彼氏なら良かったのに」

「二股は出来ないよ」

「彼女にバレなきゃ良いじゃん」

「……そ、そうかな?」

「そうよ。私、上手だよ!」

「何が?」

「ヒミツ」


2人は腕時計が、11時を回るのを見てから、お姉さんの住む、賃貸マンションに向かった。

15階建ての、7階がお姉さんの家だった。

部屋はとても、綺麗に掃除されていた。

2人は交代でシャワーを浴びて、横井は冷蔵庫からバドワイザーを2本取り出し、1本を風呂上がりの坪井に渡した。

その後、2人はセックスをした。

上手の意味が分かった。舐めるのが上手だった。一発目は、口の中だった。


それから、恵にバレないように、横井とも遊ぶ様になった。


ある日。

恵が坪井に言う。

「健君、最近、忙しいの?」

「何で?」

「全然、相手してくれないじゃん。……まさか浮気?」

「ば、馬鹿な事を言うでねぇだ」

「図星だね。ま、浮気しても私は怒らないよ。でも、子供だけは作らないでね」

「はい」

「ほら?やっぱり浮気してたんだ」

「何の事かのう」

久しぶりに恵と映画を観た。レンタルだが。

メル・ギブソンの「顔のない天使」だった。

坪井は、映画に感動して号泣した。

恵は坪井の頭を撫でていた。


また、何時もようにパチンコ屋に行くと、横井がいた。仕事上、付き合ってるとは言えない。客に高設定のパチンコやスロットの台情報を流さないためだ。

この日は、モーレツ原始人。

5000円で確変を引く。だが、出ては飲まれ、飲まれては出しての繰り返し。

3箱出して終わった。プラス1万円。

この日の夜は、バイトなので何もしなかった。

坪井は、バイトをしてタネ銭を作りセミプロとしてパチンコを打っていた。

勉強ももちろんしている。

充実した、大学生活を送っていたのだ。

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