第6話デマ
経済学部の古屋が空いている教室に集まった、サークルのメンバーに言った。
「坪井君、刺されたらしいよ!」
周りはびっくりして、
「生きてるの?坪井君は」
と、一番仲の悪い川畑久美子が尋ねた。
「今、市民病院へ救急車で運ばれたってさ。一緒にいた大崎君は警察の聴取に遭っているらしいよ」
と、古屋は知ったばかりの情報を皆んなに話した。
植林が、
「今度、坪井のお見舞いに行こうか?」
と、言うと女子連中は頷いた。
すると、大崎が教室に現れた。
「やっと、警察に開放されたよ」
「大崎さん、坪井君の容態は?」
と、中本が尋ねると、
「身体に刺さる前に、右手で掴んだんだ。この前の講義で、坪井君悪さしたヤツを半殺しにしてね、恨み買って殺されそうになったけど、逆に奪ったナイフで犯人の膝に突き刺したんだ」
と、大崎はペットボトルの紅茶を飲んだ。
法学部の高山愛は、
「それは、正当防衛に当たるよね?」
「妥当だと思う」
と、法学部的に大崎は答えた。
その日は、それで解散した。皆んな、坪井はショックで大学に来れないだろうと思っていた。
翌日、坪井は現れた。右手は包帯が痛々しく巻いてあり、大崎の授業のコピーをもらっているらしい。
一番喜んだのは、川畑だった。
「アンタ、運が良いわね。刺されれば良かったのに!」
「黙れ!醜女!お前のようなハエにたかれたか無いよ!なぁ、皆んな」
周りは黙っていたが、細田が坪井の快気祝いと、言って皆んなで飲みに行く。
坪井の快気祝いだから、坪井はロハ。
「じゃ、事件解決祝いだな」
と、大崎は坪井に言った。
「あのバカ、薬もやってたらしいよ」
と、坪井が言った。安居酒屋で飲んで酔っ払って別れた。
だが、坪井は川畑に、
「おいっ、そこの醜女!飲み直さないか?」
「ふん!どうせ、安居酒屋でしょ」
「まぁね。お前が一番心配していたらしいな」
「全然、ウソです」
「良いから、タクシー乗れよ!」
と、言うと2人は夫婦寿司なる回らない寿司屋に行った。
「さ、川畑。いつも、イジメてごめん。好きなもん食え!」
と、坪井はビールを飲みながら言った。このサークルの連中の主流だ。川畑もビールを飲んでいた。
ビールは、もちろん赤星だ。だが、悲しいかな、スーパードライもキリンラガーも呑んで終着駅が赤星なら様になるが、所詮は大学生の舌。
赤星が良いと聴いたら、赤星を飲む。黒ラベルではダメなのだ。
「坪井!大丈夫?お金」
「まぁ、何とか」
「私、1万円はあるけど、足りなかったらどうするの?」
「食い逃げ!お前を残して」
「死ねば良かったのに!」
「うるせぇ、腐れ売女!カワハギ食うぞ」
「かわはぎ?何?肉?」
「バカ。食えば分かる」
坪井の実家は九州で、良く海釣りのお裾分けでカワハギやウマヅラハギをもらっていたのだ。
皮を剥ぐから、カワハギ。肝が美味しい魚だ。
店には、「カワハギ時価」と、あった。
川畑は肝を醤油に漬けて、刺し身を食べた。
「おいっ、ブサイク!これ相当美味しいよ」
「知ってる。だから、肝醤油で食えと言ったんだ」
「アンタ、食べないの?」
「オレは、茶碗蒸しで良いよ」
「これ、全部食べちゃうよ」
「いいよ」
と、ビールを飲んだ。苦味がクセになる。
見事、カワハギの刺し身を完食した川畑は、カッパを頼んだ。
「バカだな、もっといい奴食えよ!」
「……だって、お金高いと思うから」
「大将、ゴメン。カッパじゃなくて、大トロ、それとウニ」
「……いいの?」
「あぁ、いいよ。今までのお詫びだ。だがな、オレはお前が大嫌いだ!だから、明日からは覚悟しとけ」
「フンッ!刺されて死ねば良かったのに。ウハハハ」
「アハハハ」
だいぶ食って、飲んで37000円だった。カワハギの時価は5500円だった。
だが、坪井はキャッシュで支払いした。
ツーバンドルもらったことは内緒にしている。150万円は貯金して、残りは遊び代に使うつもりなのだ。
「坪井!今夜はありがとう。美味しかった。今日の友は明日の敵!覚悟しとけよ!」
「分かった、分かった、トベラ!」
2人は別れた。
時間は、8時半。
1人で歩いて行くと、パチンコやのネオンに吸い寄せられた。
モンスターハウスを打った。
投資3000円で、333!確変。
そこから、連チャンが止まらない。閉店まで確変は止まらなかった。
結局、12箱出して換金。58000円。
寿司屋代が戻ってきて、さらにプラス18
000円。
11時帰宅。インターホンが鳴る。出ると、彼女の恵だった。
恵は酔っ払っていた。
坪井は酒臭いが酔いは覚めていたので、恵に冷蔵庫の中からアクエリアスを出して飲ませた。
聞けば、短大の仲間のメンバーと、医学部生との飲み会だったらしい。
「健君聴いてよ!あの男ら、短大生は馬鹿ばっかって言ったの」
「まぁ〜妥当だね」
「何で、あんな牛乳の瓶底メガネした、ブサイクに散々言われなきゃならないの?金は割り勘って言っけど、友達と3人で逃げちゃった」
「医学部生はうちの大学にはいないけど、所詮は3流大学の医学部生だろ!大したことねぇよ!あ、シャワー浴びてこいよ!その後、オレも浴びて今日は寝たい」
「うん。そうする」
2人がベッドに横になったのは、12時を過ぎた当たりだった。
薄いアパートの壁だ。隣の女性の喘ぎ声が聞こえてくる。あのお姉さん、毎晩彼氏とエッチしている。今夜は2人は大人しく寝た。左側の腕枕に恵は寝ている。
しばらくすると、坪井も眠りに就いた。
明日は、土曜日。必修科目がある。
その後は、パチンコと決めていた。
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