第4話坪井の変化

坪井はパチンコを打っていた。

ブリバリ原始人を。5千円で食らいつき、すで5箱積んでいる。

まだ、出る予感。今日はまた、中山恵を誘って飲んでからカラオケだな?と考えて打っていると、携帯電話が鳴る。

ホールはうるさいので、外に出た。

「もしもし、坪井だけど」

「あっ、健太君」

「なんだ、いずみか?看護学校楽しい?」

「うん。楽しい。健太君、真面目に勉強してる?」

「してるよ、今も本屋で参考書を探していたよ」

と、軽くウソをつく。そして、衝撃的言葉を彼女は発した。

「私、彼氏出来たんだよね。健太君、別れてほしいの」

「彼氏?……あ、良いよ、、それで。じゃ……」

「あっ、ちょっと待って、健太く……」

ツゥーツゥーツゥー

坪井は知っていた。九州の同級生から、いずみの男関係の話しを。

気にせず、坪井はパチンコを続けた。

夜の7時までに、15箱だした。

しめて、7万5千円の勝ち。


バイトが終わりがけの、中山の働く焼き肉屋に行くと、最近覚えたての生ビールを舐めるように飲んでいた。


「お待たせ!坪井君。どこ行こっか?今日、私、給料日だから」

と、言って2人は駅前の中華料理屋で食事をした。

恵はコーン茶割りを飲み、坪井は生ビールを注文して、餃子、麻婆豆腐、棒々鶏などを注文した。


「坪井君。ちょっと、元気ないね」 

と、恵が察した

「彼女と別れちゃった」

「えぇ〜、この前、部屋の写真立てにあった、可愛い彼女と?」

「うん。男が出来たらしい」

「大丈夫、坪井君には私がいる」

「ありがとう」

「いつでも、相手してあげるよ。ご近所さんだし」

「うん」


2人は黙々と料理を食べた。

カラオケ屋に行くつもりだったが、坪井のアパートで飲み直す。

さっきの中華料理代は坪井が払ったので、宅飲み用の酒とツマミは恵が買った。

それでも、坪井の財布の中には軍資金の残りと勝ち金6万5千円入っていた。


「坪井君。髪の毛、私の知っている美容室でカットしない?」

「美容室?女の子の店でしょ?」

「いいえ。男性も行くのです」

「分かった。今度連れて行って」

「あと、メガネ。勉強の時以外ははずしてよ。そうしたら、坪井君、イケメンの仲間入りだよ」

「そ、そうかな?」

「絶対そう。君はダイヤモンドの原石だから。それを、見つけたのは私だから、私が坪井君の彼女になってあげる」

と、梅酒を飲みながら恵は言い放った。

「彼女って……いいの?」

「もちろん」

「じゃ、これから宜しく、恵ちゃん」

「坪井君の下の名前は?」

「健太」

「じゃ、健君だね」

「なんか、志村けんみたいだな」

「気にしない、気にしない」


2人は音楽を聴きながら飲んだ。

イエローモンキーのアルバムだ。

「明日は、土曜日だから髪の毛カットしようよ!」

「ごめん、法学部だけ土曜日に必修科目があって、15時にはもどるけど」

「良いよ。明日の17時に予約入れとく」

「いくら位?2000円位?」

「馬鹿ね。5000円だよ」

「床屋の2.5倍かぁ〜。まぁ、良いや。メガネ外して美容室で切れば、イケメンになるんだよね?」

「うん。その、メガネ掛けてるとオタクっぽくて」

「何を言うか〜?私はウルトラセブンマニアだけど」

坪井は、別れた当日に新しい彼女をゲットした。神様はいる。ありがとう作者かみさま


翌日

美容室に行った。恵が車で乗せてくれた。

「お客様、今日はどの様な感じで?」

「坪井。坪は坪面積の坪で、井は井戸の井」

「え?」

「名字の事でしょ?」

「いえいえ、髪型の感じです」

「……お、お姉さんが、かっこいいと思える髪型にしてください」

「かしこまりました」


若い女性美容師は、坪井の髪の毛を切り始めた。

メガネを外しているので、鏡の姿がぼんやりとしか見えない。


カットしてから、シャンプー。シャンプーは、違う若い男性が来てくれた。

ドライヤーで髪の毛を乾かして、

「何か付けます?」

「ワックスで。後、ひげ剃りは?」

「美容室では、免許が無いのでひげ剃りはありません」


1時間後、恵は坪井の姿を見て、

「健君、めちゃくちゃかっこいい。これで、モテるね?でも、彼女は私だからね」

「うん」

車で自宅に戻ると、坪井は恵を連れてパチンコ屋に行った。

恵に1万円札を渡し、負けても良いから。勝ったら、1万だけ返せば良いよ。と、言った。

モンスターハウスを並んで打った。恵の台から3回ツルツル予告が出た。

見事、大当り。単発絵柄が再抽選で確変になった。使った銭は2000円。

坪井は8000円で、確変図柄が揃う。

恵は6箱、坪井は12箱。

終わると、恵は3万円、坪井は5万5千円の勝ち。恵は坪井に1万円は返した。

それでも、2万円の勝ちなので喜んでいた。

その日はまっすぐ帰宅した。


月曜日、大学に行くと、大崎が、

「坪井君、めちゃくちゃかっこいいね」

「何が?」

「髪型と、裸眼ならイケメンなんだね」

「僕は新しい彼女出来たよ」

「え?遠距離恋愛じゃなかったっけ」

「彼女に男が出来たんだって」

「でも、彼女出来るの早過ぎじゃない?」

「それはね……」

と、坪井は経緯を話した。

細田と植林はバイトで参加出来なかったが、坪井、大崎、中本、古屋の4人で坪井行きつけの焼き肉屋に行く。

4人は肉を焼きながら、酒を飲み始めた。

皆んな、ビールを飲み始めた。最近は、甘い酎ハイより、ビールを好きになったのだ。

そこに、

「お店からのサービスです」

と、恵がキムチとチャンジャを運んできた。


「皆んな、この人が僕の彼女だよ」

「皆さん、初めまして」

残りの3人色々話していた。しばらくすると、彼女は外の客の接客をしていた。

中本が、

「贅沢は日本の敵であります」

「なんだ、中本!」

「この赤いの美味しいな」

と話しを逸らそうとした。

周りは気付いた。中本は彼女と破局したことを。

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