第70話

日が暮れてきて、境内の人も疎らになり、静かになる。

閉門の時間まで、あと僅かだった。


「晴明、体調はどう?大丈夫?」


「五分五分と言ったところかな。式神たちの力は取り戻せそうなんだけれど、

僕自身が、彼らを操る力がその分多くなるからね。正直言って、少し休みたい。」


あの強気なところしか見せないはずの晴明が、こんなことを言い出すなんて。

出雲は、やはり日本で一番のパワースポットなんだということを痛感させられた。


「時間も時間だし、ここから出よう。」


俺たちは、観光ろくにせずに、出雲大社をあとにした。

観光は二の次というか、今回の旅の理由ではないから、当然と言えば、当然なんだけれど。


「決戦は、出雲大社内でやるのかと思ってたよ。」


「まさか。まずは、偵察がてら、出雲大社に入ってみただけさ。」


「収穫はあった?俺には何も見えなかったけれど。」


「さっきも言ったけれど、式神たちが力を取り戻していると言う点で、まず一つ目の

収穫があった。そして、今回の首謀者は、白狐が調べていたものと一致している所まで

見極めたよ。」


「首謀者は、道満じゃないわよね?」


「ちょっと、待ってよ。今まで一緒に行動を共にしてきた俺のことを疑うわけ?」


「冗談、ごめんね。」


道満は、その言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろした。


「湊は覚えてる?前世で帝が飼っていた白い猫のことを。」


「覚えてるよ。帝の傍を片時も離れず、物凄く可愛がられていた白猫だろ?」


「そう。どうやら、その猫は、化け猫になってしまったようでね、今回の一件に

大きく関わっているようなんだ。」

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