第69話

バスを乗り継いだりしながら、なんとか出雲大社に着いた。


ここが良縁を呼び悪縁を切ってくれると言う出雲大社か。

すげー、注連縄の太さ。


参拝客の数も半端ない。

こんなところで、妖と一戦交えるなんて、あまりに危険じゃないか?


そんなことを考えてしまった。


「せっかく、来たんだし、参拝していこう。」


「じゃあ、俺は、晴明の代わりに、晴明に良縁があります様にって願っておくよ。」


「湊は、藤守さんとの良縁が続きますように、でいいじゃないか。僕のことは

放っておいてよ。」


そんな晴明が、一瞬見せる、寂しげな表情に何も言えなくなる。


神様ってやつが、本当にいるなら、是非ともお願いしたいものだ。

晴明の諦めの悪さをどうにかしてくださいって。


こんなことも願ってしまっていいんだろうか?


俺は、色々頭を悩ませながらも、そんなことを願っていた。


どうしたって、簡単に想い人のことは忘れられないものなんだ。

俺自身がそうだから、よくわかるけれど、目の前に仲良く付き合っている彼氏の俺が

いるのに、いつまでも未練がましく思ってるんだなと思うと、複雑な心境になる。


俺だけが幸せになっていいものなのか……。

それとも、晴明の幸せも一緒に見つけてやるべきなのか……。


「湊、もう皆、お参り終わったみたいだよ?」


目の前に、愛しい彼女が現れて、俺の邪?な心は浄化される。


綾を好きでよかった。

綾に好きになってもらって良かった。


もしも、晴明と俺の立場が逆なら、俺も同じことを思っていたかもしれないから。

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